野菜人・果物人
野菜人・果物人第101回後編 シュレスタ 勝さん(皆農塾 農場長)

第101回後編 シュレスタ 勝さん(皆農塾 農場長)

仕事としての農業だけでなく、百姓として「百」のことができる人間に・・・

●世界から来る農業体験者!日常的な国際交流も盛んな「皆農塾」


皆農塾・農場長 シュレスタ勝さん

自然農業に欠かせない、そして皆農塾の衣食住を支えるため、飼育してる動物も、立派な皆農塾の一員

ご職業 皆農塾 農場長
座右の銘 ねだるな。勝ち取れ。さすれば与えられん。

東京・池袋から東武東上線に乗って、約1時間半。秩父の山々が美しい輪郭を見せてくれる、この埼玉ののどかな地に、自給的な暮らしを体験する「皆農塾」はあります。有機農業を中心とした農ある暮らしは、かつては日本のどの地にもあった一昔前の暮らしにそっくりですが、一方で、この皆農塾の暮らしを見ていると、一年を通し多くの外国人の姿にも出会うことができます。

若き農場長・勝さんによれば、

「実は皆農塾では、5年前から、『WWOOF(ウーフ)』(※)のホストとなり、世界各国から農業を体験したい人の受け入れを行っています。皆農塾は東京近郊の数少ないホストなんです」と。

普段は、この地からめったに出ることがないという勝さんにとって、世界から農業体験に来るウーファーの存在は、それはそれは刺激的なものだとか。

「近場のアジアはもちろん、欧米から来てくれるウーファーも多く、とにかく皆農塾で生活しているだけで、毎日が国際交流!日中の農業体験だけでなく、食事も一緒に作り寝食を共にする共同生活を送り、みんなたくましくなって帰っていくんです」

勝さんの農ある生活にとって、ウーファーの存在はもはや欠かせないものに・・・。目下、ウーファーから英語を教えてもらう日々でもあるのだとか。

●「自給自足」と「経済性」二つの要素に向き合う中で・・・


勝さんともう一人、皆農塾の若きスタッフ・葉子さん(右)は、主に出荷や直売所を担当。羊毛クラフトも得意で、地元で講習会も行っています

皆農塾で販売している「野菜セット」。地元の方のお宅に宅配する他、全国のお客様への宅配も。野菜に卵、冬場は手作りのお漬物も入ります(1)


 常日頃から、「自然の中にいることが、自分らしい」と感じている勝さん。しかし、「そうは言っても、仕事が終われば、パソコンでブログも書くしゲームも好きです」と素直に笑う笑顔は、21歳の若者。

ウーファーとの交流はもちろん、自然の中の暮らしの中にあっても、物事の受け入れ方は決してかたくなではないようです。特に農場長となったこの1~2年で「経済性」についても目を向けるようになったのだとか。

「これまでは、いわゆる顔の見える関係を大切に、野菜と有精卵のセットを、定期契約くださる消費者へ宅配する方法を取ってきました。しかし、これからはそれだけにこだわらず、いろいろな販売方法を模索していこうと。時々問い合わせが入るレストランへの食材提供も楽しいかもしれないですしね!」

現在皆農塾で、勝さんとともに働く葉子さんも、その点について意見は同じ。

「1年目は何が売れるか分からず、手当たり次第野菜を売ってきました。そのため、出荷調整に時間がかかって採算がとれないことも、しばしば。その中で2年目からは、手探り状態の中、時期をずらすだけで売れる、貯蔵を上手くすればこの時期に売れる、他の生産者があまり作っていない珍しい野菜を出してみるなど、失敗を繰り返しながら挑戦を続けています」

と、話してくれます。

皆農塾を立ち上げ、自給自足の農業を作り上げてきた、代表の恵子さん。そして今、恵子さんが作り上げてきた農業に、若い世代の二人が「流通」にも目を向け、皆農塾を盛り上げています。


●自分らしい生き方、それが「自然の中に生きる、百姓」


野菜セットは一年を通して出荷。そのため、新しい品種もの栽培も心がけています。写真左は、紫色が美しいかぶ「あやめ雪」/(写真右)台湾・香港・韓国などのアジアの他、欧米から来てくれるウーファーさんも多数。10~30代中心で、年間30~50人を受け入れています(2)


「一人は嫌、大勢が集まる場所にしたい」と語る、勝さん。毎年年末には、近隣の方を招いての餅つき大会も、皆農塾での恒例行事です(3)

 そして今回、話をする中で、勝さんが折りに触れ語った事柄が「自分らしい生き方」について。皆農塾の卒業生や各国から来るウーファーとの交流の中で、21歳という若さながら、大きなテーマについて考える場面が多い様子。

「人間らしい生き方をしたいと考えた時、自分にとって、それが農業でした。思い通りにいかない時も多い自然の中に身を置いて、自分が食べるものを作る農業というものに、生きがいを感じるんです。実は、僕自身が密かに憧れているのが、原始時代の人類やターザン。常にサバイバルな状況の中、それでも、生身の姿で楽しみながら暮らしている。それが"人間らしい"って思うんですよね!」

かつての「さぼり癖・逃げ癖」から抜け出せずにいた少年の姿は、どこへやら・・・。「仕事としての農業だけでなく、百姓として、百のことができる人間になりたい」と熱く語る姿は、身も心もすっかり、この皆農塾で生きていく覚悟ができているようです。

※注釈
『WWOOF』とは、<食事と宿泊場所>と<労働力と知識>を交換する仕組みで成り立ち、仕事の手伝いを通じて、人と人の交流を図る世界的なプロジェクト。
環境に配慮した農業やお店が登録制でホストとなり、ウーファーと呼ばれる人達が、お金のやり取りなしで、仕事のお手伝いをしながら、経験を得ていく仕組みです。



※皆農塾のホームページは こちら

文:野菜ソムリエ 神林春美
写真提供:皆農塾(1、2、3) 撮影:神林春美(その他)