野菜人・果物人
野菜人・果物人第95回前編 日東寺陽一さん(株式会社はにーびー代表取締役)

第95回前編 日東寺陽一さん(株式会社はにーびー代表取締役)

メイドインジャパンのこだわり野菜を世界に再び

●味覚は国境を超える。良さを解ってもらうには試食が一番


日東寺 陽一さん

ご職業 株式会社はにーびー代表取締役
座右の銘 一期一会

 「形は悪いけどうまいよ。食べてみて」

 毎週末に有楽町で開催されるマルシェにて、試食用のニンジンを差し出すのは、千葉県有数の農業地帯、北総台地で作られた提携農家の無農薬や有機栽培野菜をインターネット販売している株式会社はにーびーの代表、日東寺 陽一さん。そのままジュースにしてもおいしい甘く濃厚なニンジンは、ファンの多い当社きっての人気商品です。

「海外でも人参は人気でしたよ」

 8年前から、シンガポールや香港、タイに住む日本人駐在員向けに野菜の宅配を始めたのを皮切りに、大手スーパーや百買店、ホテル、米国の日本料理店などに向け、日本産野菜の輸出を手がけてきました。

 特に経済発展の著しいアジア諸国では、富裕層の間で栽培管理の行き届いた安全な無農薬野菜の需要が高まっていました。何より評判を得たのは、その味。

「言葉で説明するより食べてもらうのが一番。売り方の基本は国内と一緒です」。



●海外という市場を開拓して若い生産者に夢を


有楽町でのマルシェ。お客さんの声は産地に持ち帰る

おかげさま農場の野菜を中心に、有機栽培無農薬野菜が並ぶ

 無農薬や有機栽培野菜への関心が高まりを見せてから20年ほど経ちますが、国内で流通しているものは全農産物の0.2%に及びません。手間もかかり歩留まり率の悪い栽培法を実践する農家は未だ少数派です。

 品不足からくる欠品問題、折からの不況も加わり国内でのマーケットは伸び悩んでいました。そこで目をつけたのが海外。中国産野菜の残留農薬問題もあり、香港へ転勤になった顧客へ野菜を宅配したところ、口コミや紹介で日本野菜を求める声が広まりました。

 実際、海外での市場調査を重ね、メイドインジャパン野菜の需要は伸びると確信した日東寺さんは、商社を仲介し本格的な輸出業に乗り出しました。

 日本産というだけで注目され、ジャパンブランドが先行しはじめるなか、無農薬で安全な本物の日本野菜を広めたいと契約を進めていました。「海外というマーケットを拡大して無農薬栽培に取り組む若い生産者たちに夢を与えたかった」と語ります。



●マーケット拡大のために、農政に協力を願い出る


おかげさま農場の生産者、石橋農場の跡継ぎ、期待の若手。

 海外視察を重ねて感じたのが、売られている日本野菜のほとんどが、沖縄や宮崎などの九州産。これらの県では、行政のバックアップがあるために輸出への負担が少ないということに気がつきました。

 会社を構えている香取市をはじめ千葉県は有数の農産県。輸出の玄関口となる成田空港も抱える同県に対し、県知事宛に海外貿易推進の為の予算確保の陳情書を提出しました。

 日々農作物に向き合い格闘している生産者になり代わり流通を担う立場としてマーケット拡大に必要ならロビー活動さながらの行動も厭いません。

 そして今年3月に発生した東日本大震災以降のこれまで経験したことのない農家の窮状を前に、何をすべきかできるのか、責任の重さをひしひしと感じています。



※<後編>では、異業種からこの世界に参入した理由、そして震災以降、千葉県北総台地の産地の現状を語っていただきます。



※株式会社はにーびーのホームページは こちら

文・写真:ジュニア野菜ソムリエ 渡邉美穂