野菜人・果物人
野菜人・果物人第84回後編 桜井 勝子さん(体験型さくら農園みらい塾経営 生産農家)

第84回後編 桜井 勝子さん(体験型さくら農園みらい塾経営 生産農家)

何年経験しても同じように実る年はない。だから農業は面白い!

●農業とは作戦がすべて!


桜井勝子さん「今日は暑いから、うちのスイカを食べてから始めましょう!」

ご職業 体験型さくら農園 みらい塾経営 生産農家
座右の銘 一心は岩をもとおす 飛ぶ鳥あとをにごすな

「農業は工夫すればいくらでも稼げる」と工夫をおこたらなかった祖母の言葉を頼りに、
「朝起きたらまず、どんな野菜をいつ、どう作付けして育てようかと作戦を立ててきました」
という桜井さん。


ブロッコリーとキャベツの苗を植える。苗を植えたら周囲にくぼみをつけて水をあげてね

肥料は桜井さんが配合

 世の中の流行りやその年の天候などを見極めて作戦を立てる。自分で考え計画して実行する能力、そこに男女の差はありません。

「お店でお客さんを待つように、畑に行って待っていてもはじまらないの。自分が行動しないことにはね」。

 みらい塾を初めてからは、常に皆が効率よく作業しやすいよう、道具の準備や肥料の配合、講習会の準備に余念がありません。植える野菜は料理によく使うものを定番に、飽きさせないよう、毎年新しい野菜も取り入れています。

「体験農園だから失敗もいい体験になるけれど、できれば豊作になるよう、天気を睨みながら栽培方法もその都度練り直すのよ」。

 また、忙しくて作業に来られないという人のために、枝豆など株のオーナーになってもらい収穫だけを体験できるオーナー制農園も始めました。
 ニーズを探りながら工夫する、段取りと考察力、判断力が要される農業という仕事の面白さがそこにはあります。



●苦労は自分の肥やしになって帰ってくる


長年連れ添ったご主人と。作業小屋で出荷の準備中

塾生さんにも人気。ハウス内の無人野菜販売コーナー

桜井さんの講習に熱心に耳を傾ける塾生さんたち

 嫁いですぐに姑の介護と一男二女を育てながら夫婦二人で農業に打ち込みました。

「忙しかったけれど、仕事に夢中になれた分、一瞬でも子育てや介護の不安を忘れることができたのはよかったかも。苦労は肥やしになって自分にかえってくるからね。人生無駄な経験なんて一つも無いですよ」。

常に前向きな桜井さんのパワーの秘密を垣間見た気がします。

 現在は、三人のお子さんも無事成人されそれぞれが自ら選んだ仕事や伴侶を得られ独立されています。
 会社勤めをしている長男ご夫婦とお孫さんは同じ敷地内に住み、みらい塾のイベント時にはお嫁さんが手伝ってくれるなど関係も良好。
 大家族の本家として親戚付き合いの気苦労を経験している桜井さんにしてみれば、今の状況は、願った通りのあり方といいます。

「私、人生の未来設計図を建てているの。運がいいのか思ったことは全て叶っているわよ。まず、農業は85才まで続けるつもり。これからは、本当にやりたい農業をしながらかわいい孫たちに、一所懸命いきいきと働くおばあちゃんの生きる姿勢を見せられたらいいなと思っているわ」。



●苦手なこともまずはやってみる。新しい自分を発見できるかも


女性起業家レベルアップ研修会で活動報告をする桜井さん

プロジェクターを使って、講習会の様子を紹介する桜井さん

 みらい塾を始めた当初、大勢の人前で説明する講習会なんてできるだろうかと心配したそうですが、今では「桜井さんの話が面白いから講習会に来ている」という塾生さんもいるほどに。
 農業の経験はもとより人生経験豊富な桜井さんの話は、軽口を叩いているようでもどこか、含蓄に富んでいます。

 今年の不作を嘆くベテラン塾生さんに「最近奥さん見えないね〜やっぱり畑は女の力がないとダメだからね」。「草取りをしっかりする人は畑も豊作だし仕事もうまくいって金回りもよくなるよ」などなど。

 先日は、千葉県の農林水産部が主催する女性起業家の研修会で、大勢の同業者を前に、みらい塾の活動状況を発表。勇気と元気を与える話で魅了しました。

 これからも、自分の体験や経験をいろんなと所で話してみたいと意欲的な桜井さん。最近は、テレビを見ていても、話の間の取り方などつい気にして見てしまうそう。

「どんなことでも勉強になるわね」

 長年培った確かな技術と経験を自信に、そして何より健康を武器に、自分をしっかり生きている桜井さんのスッピンの笑顔はとても魅力的でした。



文・写真 ジュニア野菜ソムリエ 渡辺美穂