野菜人・果物人
野菜人・果物人第83回前編 結城 拓也さん(八尾野菜生産者)

第83回前編 結城 拓也さん(八尾野菜生産者)

大阪府八尾市発! 生でもおいしい完熟枝豆の舞台裏

●手をかけた作物は一番おいしい状態で消費者のもとに


結城拓也さん

ご職業 八尾野菜生産者 八尾堆肥研究会メンバー
座右の銘 旬を大切に

「甘い!とうもろこしみたい」
 大阪府八尾市の生産者結城拓也さんの農園を訪れ、生の枝豆を試食させてもらった際、思わず出た言葉です。
「でしょ?いい土で作った完熟の枝豆って、生でもおいしいんですよ」とにっこり笑う結城さん。

 夏の早朝3時。結城さんの1日はまだ暗いうちから始まります。夜明け前に畑に行き、完熟した枝豆を選別して収穫。作業場に持ち帰るとすぐに脱莢機にかけ、専用の冷蔵庫へ。


収穫後すぐに脱莢機にかけます

実がしっかり入った莢だけが運ばれてきます

枝付きのものも出荷しています

「枝豆は、日が昇ると呼吸を始めて、糖分が失われ甘さが減少してしまうんです。でも収穫直後の枝豆を冷暗所で保管すれば、鮮度もおいしさもしばらくそのまま保てるんですよ」

 翌朝には大阪卸売市場の競りに持ち込み、その日のうちに大阪府下のデパート等に並びます。収穫した翌日には消費者のもとへ。

 収穫後2日もたてば旨味成分であるアミノ酸が半減してしまう枝豆ですが、一般的に流通しているのは、遠方の生産地で、熟しきらない状態で収穫し、数日を経たもの。生産量を一定に保つため、さらに流通のしくみという事情もあり、実は私たち消費者がスーパー等で買い求める枝豆は、最もおいしい状態ではない場合が多いのです。

 このような通常の収穫や流通方法を取らず、手間もコストもかかる"完熟"と"スピード"にこだわるのは「丹精込めて作った作物は、一番おいしい状態で食べてもらいたいですから」。

 こうして生まれた、今までの枝豆の概念を覆すほどの、旨味と甘さが凝縮された、結城さんの枝豆。同様に、ほうれん草や菊菜、若ゴボウを栽培し、現在は『八尾野菜』として知名度もアップしましたが、"安心で安全な農作物を一番おいしい状態で消費者のもとに届けたい"、その想いが実を結ぶまでには様々な試行錯誤があったそうです。



●若手ならではのパワーで農業に新風を


夏は枝豆、冬は菊菜とほうれん草、春は若ゴボウを生産


 大阪府八尾市は、消費地大阪市に隣接している地の利で、新鮮野菜をすぐに運搬できるという強みがあり、昔から農業が盛ん。その八尾市で代々続く農家に生まれた結城さんですが、次男ということもあり、学校を卒業後はサラリーマンに。ところが

「サラリーマンを経験してみて、代々受け継いできた農業のすばらしさがわかったというか。兄は技術者として企業で働いていて、家業を継ぎそうにない。じゃあ僕がやろうかと」

 25歳の決断でした。ラッキーだったのは、当時現役だったお父様が「好きなようにやれ」と、全てをまかせてくれたこと。そして周りにも結城さんと同じく、農家の跡継ぎの若手がいたこと。彼らと集結し、若手ならではのパワーで、新しいことに果敢にチャレンジしていきます。

「ちょうどダイオキシン問題や農薬や、食の安全が取り沙汰されてる時で。このへんでこんな問題が起きたら大変や、それやったら皆で協力していい土作り、安全な野菜作りに取り組んでいこかって話になったんです」



●安全・安心な野菜を作るために『八尾堆肥研究会』を設立


根粒がつくのはいい土で育った証拠!

折しも八尾市が特産の農産物PRに力を入れたいと思い始めていた時期と重なり、市の協力を得て、八尾の若手農家7人で『八尾堆肥研究会』を立ち上げたのは2002年のことでした。

 "良い土には良い作物が育つ"という理念のもと、メンバー全員で作物毎に適した堆肥を研究、有機微生物なども試しながら、良い土作りに取り組んでいます。

「土が良ければ、むやみに化学農薬や化学肥料を使う必要がないんですよ」

 取材中に「さっきのと食べ比べてみて」と、もう一莢枝豆を手渡されました。生でも甘くておいしいのは同じですが、歯触りが少し違う気が。

「実はさっきのと同じ品種で、肥料が違うんです。これはまだ研究中」。

 肥料によってこんなにも味や食感に違いが出るなんて。土の力の偉大さを実感しました。



※後編では『八尾堆肥研究会』が、農業を広く知ってもらうために挑戦する
様々なPR活動と、結城さんの今後の夢を紹介します。


『八尾堆肥研究会』ウェブサイト ホームページはこちら


文・撮影:ジュニア野菜ソムリエ 尾崎美鈴