野菜人・果物人
野菜人・果物人第80回前編 大竹 道茂さん(江戸東京・伝統野菜研究会代表)

第80回前編 大竹 道茂さん(江戸東京・伝統野菜研究会代表)

野菜を東京の風物詩に!『江戸東京野菜』の復活・普及にそそぐ情熱

●ミスター江戸東京野菜


大竹道茂さん

ご職業 江戸東京・伝統野菜研究会代表
座右の銘 一粒萬倍

 東京・新宿のサザンテラスにほど近い、東京都農住都市支援センターのオフィス。その一室で紺色のスーツをスマートに着こなしている男性にお会いしました。この方こそ江戸東京野菜の第一人者といわれている大竹道茂さんその人です。


 江戸東京野菜は京野菜・加賀野菜などと同じように、今注目を集めている伝統野菜の一つ。その復活と普及に尽力なさっている大竹さんの第一印象は、"江戸東京野菜"という言葉から連想する"伝統的"なイメージとは少し違い、洗練されていて都会的な印象でした。


「私が東京農業大学を卒業して、東京都農業協同組合中央会に入った当初は農協のコンピューター処理システムを作っていました。いわば、プログラマーですね」

 少し意外な経歴をお持ちであったこと、そして幅広い知識と能力をお持ちでることに私は改めて感嘆してしまいました。



●種の多様性を後世に伝えたい


東京都農林水産振興財団の圃場にて



日本橋まつり江戸東京野菜ブース

 大竹さんが江戸東京野菜に関わり始めたのは約20年前。日本に野菜を安定して供給するための制度ができたころです。その頃からたとえば、病気に強くてたくさん収穫できる野菜の品種が多く栽培されるようになりました。

 一方江戸東京野菜は、とても長くて抜きにくい練馬大根などに代表されるように、少し栽培しにくい野菜が多いため、だんだんと作る人が少なくなっていったとのこと。

「当時、"江戸東京ゆかりの野菜と花"という本を手掛けましたが、現在はその頃の農地の7割が宅地になってしまいました」

 そのような状況に危機感を覚え、種を保存する活動に、東京では大竹さんが関わるようになったのだそうです。

「戦後の食糧不足のときは(たくさん食べることのできる)大きい野菜が望まれましたが、今は使い切れるような小さな野菜が喜ばれます。時代時代によって望まれるものが変わるのです。ですから今後必要になるかもしれない多様な遺伝子を残すためにも、種を次の世代に伝えることはとても大切なことなのです」



●江戸東京野菜をより身近な存在へ


日本橋まつりでの江戸東京野菜のPR販売

「江戸東京野菜の復活に関わり始めて20年ほど経ちますが、最初のころはあまり大きく取り上げられませんでした」

 転機は平成19年、日本橋ゆかりなどの料理に関わる人たちが注目しはじめてから勢いを増したのだそうです。

「それまでは作った江戸東京野菜を直売所などに売るだけでした。料理人や食べ手が欲しがるようになってから、注目されるようになったのです」

「知識として持っているだけではダメだ」と思った大竹さんは、料理の分野にとどまらず、地域のイベントや学校の食育の一環に江戸東京野菜を取り入れ、また流通を担う市場の人たちとも連携をしながら活動の場を広げています。


 このような大竹さんの意欲的な活動は東京に暮らす人たちにとって、江戸東京野菜をより身近な存在とし、また自分たちの食文化を守るという誇りにもつながる、とても大きな力であることを感じました。



※後編では、大竹さんの発案した江戸東京野菜のユニークなイベントや学校での食育活動をお伝えします。



江戸東京野菜通信 ブログはこちら


文・撮影:野菜ソムリエ 霜村春菜
写真提供:大竹道茂さん(圃場)
写真提供:上原恭子さん(日本橋まつり)