野菜人・果物人
野菜人・果物人第79回後編 水島 明さん(緑提灯事務局)

第79回後編 水島 明さん(緑提灯事務局)

遊び心を持って食料自給率を向上させる

●緑提灯誕生秘話「きっかけは飲み会で」


緑提灯事務局 水島 明さん

ご職業 緑提灯事務局
座右の銘 合言葉は「正直を重ねて信頼を得る」

 全国に展開する大きな運動になった緑提灯運動。その事務局を務める水島明さんに、運営組織の概要を伺うと、水島さんは笑いながら答えました。

「緑提灯に運営組織はありません。広報も営業も経理もいないし、代表者だっていません。事務局も形式的に私が担当しているだけです。難しく考えないでください。緑提灯は私たちの『道楽』なんですよ」

 緑提灯の構想が生まれたのも、まさに道楽の場である飲み会の席でした。

 時はさかのぼり2002年、当時農林水産省の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)で緑提灯発案者の丸山清明さんたちと一緒に働いていた水島さんは「仕事とは別に、楽しく自給率を上げる試みはないか」とお酒を飲みながら話していたそうです。



記念すべき緑提灯第一号。当時は現在のデザインは完成していませんでした

「赤提灯は飲み屋のシンボルですが、信号でいうと『赤は止まれ』ですよね。でも『緑は進め』でしょう? 『国産食材を使ったお店に行きましょう!』って意味で緑の提灯を作ったら面白いという話で、私を含めオジサンたちは盛り上がっていたんです」

 しかし次第にアイデアは練れてきたものの、仲間たちは異動などで全国へ散り散りに。水島さんにとって緑提灯のことは良い思い出になっていました。
 ところが時は流れ2006年、再び丸山さんと同じ職場になった水島さんは思いがけない報告を耳にします。

「なんと丸山さんは異動先の北海道で緑提灯の運動を始動させていたんです。これを機に、早速私含め当時の飲み仲間たちが合流しました」



●本当に大事なのは提灯より「想い」


闇夜に生える緑提灯の光。応援隊は真っ直ぐ店内へ!

 世間に知られるようになった緑提灯では、ちょっと困ったことも起きるようになりました。水島さんたちの知らない「もどき緑提灯」やその運営団体が各地に登場し出したのです。注意の意味で連絡を取ったところ、水島さんはあることに気付きました。

「話を聞くと地元の食材を売りにしたいとか、地域の農業を盛り上げたいとか、私たちと何ら変わらない気持ちを持っていることがわかりました。そこで私たちはあえて黙認し、逆に協力して緑提灯を広げていこうと考えたのです」


 ある県では大規模な非公認の緑提灯組織があったそうですが、水島さんが連絡を取ると直ぐに一緒に活動したいという話になりました。そういう事例の多くは、緑提灯事務局の連絡先がわからないとか面白そうだからマネしてしまったとか、悪意のない場合がほとんどだそうです。

「本当は提灯が本物でも偽物でも関係ないんですよね。そういう趣旨の店が増えることが私たちの大事なのだと思います」



●飲食から教育現場へ、緑提灯の新たな展開


保育園の緑提灯。その理念は飲食店に留まらず広がっています

 緑提灯では最近、今まで全く想像しなかったことが起きているそうです。なんと国産の茶葉にこだわったお茶屋さん、地方の土産店、国産間伐材を用いた割り箸メーカーなど、直接的に食料の自給率とは関係のないお店や業者さんからの問い合わせが増えているのです。

 さらには過疎地域の中学校からの問い合わせもありました。地域の農産物を給食に利用している学校で、子供たちに自分の地域を誇りに思ってほしいという願いで、校長先生が水島さんに連絡をしてきたそうです。




土産物店コーナーに緑提灯を飾りたいという依頼も

「元は居酒屋から始まった運動なので、どこまで幅を広げていいのかと悩みました。しかしそれらは全て『日本の農林水産業を元気にする活動』で、ひいては緑提灯の目指す食料自給率向上にも繋がると考えました。元々ユルい運動ですからね。良い試みにはどんどん協力していこうと決めたんです」

 こうして2010年2月に「緑提灯の学校」が誕生しました。その様子は全国紙にも大きく取り上げられ、緑提灯の新たな可能性を示したといっていいでしょう。



●今のままのスタイルで緑提灯を増やしていきたい


FOOD ACTION NIPPONアワード2009授賞式にて。立案者の丸山さん(写真右側)と表彰を受けました

2010 年4月23日緑提灯誕生 5 周年を記念。首都高・レインボーブリッジが緑色にライトアップされました

 今や全国的に有名になった緑提灯は、商社や外食チェーンから「ビジネスとして成?させないか」という商談を持ちかけられることも増えたそうです。しかし緑提灯自体を?儲けに使う気は一切ないと水島さんは話します。

「最初に話したとおり緑提灯はあくまで道楽なんですよ。遊び心をこれからも忘れず、いつまでものんびりやっていく、それが私たち共通の想いです」

 細かいルールを設けて、違反者を厳しく取り締まる。それが当たり前の現代社会と逆のことを緑提灯の運動はおこなっています。人との繋がりが希薄になり、疑うことに慣れた今だからこそ、水島さんたちの活動は全国に受け入れられるのでしょう。

 実際その考え方と実績が評価され、緑提灯は FOOD ACTION NIPPON アワード2009 のコミュニケーション・啓発部門で最優秀賞を受賞しました。ますます可能性あふれる緑提灯の展望について水島さんに伺いました。

「全国の飲食店の1%といわれる5000店の登録を目指します。広告は使わず、今のままのペースでじっくりと達成しますよ」

 オジサンたちの飲み会から生まれた緑提灯という道楽。その道楽が、遊び心を忘れた現代社会をもっと沸かせる日は意外と遠くないのかもしれません。



緑提灯 ホームページはこちら


文・撮影 ジュニア野菜ソムリエ 橋本哲弥
撮影協力:青山がらりつくば店
写真提供:水島明さん(土産物店、保育園、闇夜の緑提灯、緑提灯第一号)
写真提供:緑提灯事務局(授賞式)
写真撮影・提供:日本農業新聞(首都高ライトアップ)