野菜人・果物人
野菜人・果物人第79回前編 水島 明さん(緑提灯事務局)

第79回前編 水島 明さん(緑提灯事務局)

緑色の提灯で日本の食を盛り上げる

●「緑提灯」運動とは


緑提灯事務局 水島 明さん

ご職業 緑提灯事務局
座右の銘 合言葉は「正直を重ねて信頼を得る」

 みなさんは飲食店の軒先に飾られた緑色の大きな提灯を見たことがありませんか? この緑提灯が飾られている店には大きな特徴があります。それは国産食材を用いた料理を提供する、いわば自給率の高い飲食店だということ。緑提灯は近年食料自給率向上のシンボルとして注目を集めているのです。


「緑提灯は『40%程度まで落ちた日本の食料自給率を少しでも向上させよう』という志の下に集まったメンバーが始めたボランティアの運動です。 2005年北海道・小樽市の一軒のカキ料理店からスタートし、今では全国に2700件以上の登録店を持つ大きな運動になりました」

 そう話すのは緑提灯の事務局を務める水島明さん。運動に初期から参加している中心メンバーの一人です。
 当初、お互いのカンパでおこなってきた水島さんたちの小さな運動は、2008年の2月にある専門紙で緑提灯の活動が掲載されたことで一変します。



人の顔の倍以上ある緑提灯。人の身長を超す大きさの提灯もあるそうです

「その記事を見たテレビ局や一般紙からも取り上げられ一気に知名度が上がりました。当時は中国製冷凍ギョーザ事件が報じられた後でした。国産を推奨する私たちの運動が人々の心に響いたのでしょう」

 緑提灯のメンバーは毎月数百件というペースで増え続ける加盟申請を受け、慌てて運営の体制を整えました。そのとき丁度定年して時間に余裕のできた水島さんが事務や窓口業務を担当することになり、そのまま現在に至ります。



●提灯は店の「覚悟」や「心意気」


星の数で自給率を示します。この店は星4つなので80%以上!

「地場食材応援の店」と書かれた緑提灯は、その大きさにも目を引かれますが、縦に並んで描かれた5つの星も大変目につきます。

 この星は店の自給率を示す目安。日本のカロリーベース自給率50%なら星1つ、60%ならば星2つというように、星1つが自給率10%と計算して、店側で星の数を設定しています。この数は店ごとの自己申告で、じつは緑提灯事務局側からの審査はありません。

「従来までの自給率向上運動は『官製運動』『認定主義』でした。しかし、公な機関などの承認が利益と結びつき、結果、老舗や業界大手の食品偽装を生んでしまいました。

 緑提灯では登録料や年会費は徴収しませんし、運営側からのチェックもありません。ペナルティも『頭を丸める』『反省と書いた鉢巻を締める』という冗談みたいなもの。緑提灯は、『ユルい』運動なんです」



緑提灯は和歌山在住の職人・嶋さんが一つ一つ手作りしています

 特に規制も罰則もないという水島さんたちの取り組みですが、未だ一人も違反者は出ていないそうです。その理由を水島さんは次のように話しました。

「緑提灯を飾ることや星の数の設定は、店側の『覚悟』や『心意気』です。裏切りありきではありません。緑提灯の審査員はお客さんなのです。偽装をした店は私たちが罰則を与えなくても、お客さんから見放され、鉢巻を締める前に店を閉めることになるでしょう」



●提灯の光で頑張る店を照らし出す


緑提灯のお店にて。地元茨城の蕎麦粉でつくった「もぐらそば」。薬味も汁も国産


安心・安全へも配慮。緑提灯のお店の食材は店主のこだわりがあります

 明確なメリットのない緑提灯の活動が全国的に広がった理由は何なのか。その問いに対して水島さんはこう答えました。

「緑提灯を飾っているのは『正直を重ねて信用を得る』ことを地道におこなっているお店だけです。緑提灯が生まれたからそういった店やお客さんが増えたわけでもありません。既に存在していて、運動に同調してくれただけ。私たちはそれを提灯で『見える化』しただけです」

 マスコミの報道が落ち着いた今も緑提灯は増え続けており、一日平均1〜2件の問い合わせがあるそうです。これは運動をボランティアで支える『応援隊』という3000人以上の登録隊員がいるため。非登録会員を含めれば応援隊は数万人いるそうです。その活動とは何かといえば至極単純、緑提灯を飾ってある店にためらわず入ることです。
 
「以前はメディア経由での問い合わせが多かったのですが、今は口コミがほとんどです。緑提灯を飾っている店や、そこに通うお客さん同士は、繋がりが強い。ネットワークが自然に広がっています」

 緑提灯のことを知っているお客さんが他店の店主に推薦したり、店の常連さんが申請して提灯をプレゼントする事例もあるそうです。

「もうおわかり頂けたかと思いますが、緑提灯の運動は『全国規模の遊び』なんですよ。子供の遊びではお金を儲けたり、厳格な罰則をつくったりなんてしないでしょ? 運営側の私たちも店側もお客さんも楽しんで、気軽に参加できる運動でありたいと思っています」



※後編では、水島さんに緑提灯の誕生秘話や新たな展開について伺います。



緑提灯 ホームページはこちら


文・撮影:ジュニア野菜ソムリエ 橋本哲弥
撮影協力 青山がらりつくば店
写真提供:水島明さん(職人・嶋さん・ニュース和歌山撮影)
写真提供:青山がらりつくば店(もぐらそば・無農薬野菜)