野菜人・果物人
野菜人・果物人第75回後編 のじま五兵衛さん(農園「杉・五兵衛」園主) 

第75回後編 のじま五兵衛さん(農園「杉・五兵衛」園主) 

日本の農が持つ価値?無形財産?を次世代へ伝えたい

●日本で最初の農園レストラン誕生


農園主 のじま五兵衛さん。ユズを収穫中。料理のほか、焼菓子やジャムに加工します

ご職業 農園「杉・五兵衛」園主
座右の銘 本物でありたい

 日本の農の価値は何かと考え続けた五兵衛さん。まずは消費者に生産現場を見て、その場で食べてもらい、農を知ってもらおうと、行き着いたのが農園レストランという形態でした。

 そうして日本初の農園レストランが誕生したのです。最初は芋掘り体験+芋がゆというシンプルなメニューからのスタートだったとか。


38年前に完成した日本で最初の農園レストラン

 当時は100%有機循環農業ではなかったのですが「食べ手が目の前にいると、やっぱり身体に優しいものを作らなあかんと思うもんや」と、もともと好きで飼育していたロバの糞で発酵堆肥を作ることに、試行錯誤の末成功。

 とはいえ、堆肥の発酵も、農業も雨量や気温といった自然条件に大きく左右されるもの。苦労は未だに絶えませんが、

「それをおもしろいと思えるかどうかやな。結局僕はこの農園のなかで育ってきて、ここが遊び場でもあった。ここが好きで、農業が好きなんやな」。



●自分で収穫して食すことは、誰にとっても感動的


この日の食育調理塾では枝豆を収穫、ずんだ餅に

 今でこそもてはやされていますが、当時としては画期的だった農園レストランという形態。周囲からは色々言われたこともあったそうですが、意外にもレストラン自体の経営は順調だったとか。

 その理由を「土の中に根をはって、一生懸命葉を広げ、実をつけてる農作物を、自分の手で収穫して食べるって、誰にとっても感動的なことなんやと思う」と五兵衛さんは分析します。

「そんな生命あるものをいただくんやから、食べるときに自然と『いただきます』って、言葉がでてくるもんなんやなぁ」とも。



●農に親しんでもらう様々なイベントを開催


テラスハウスではウェディングパーティもできます!
収穫物を使用した焼菓子やジャムなども販売

 農園レストランと有機循環農業をスタートしてから約38年。

 現在ではイチゴ狩り・サクランボ狩り・ブドウ狩り・芋掘り体験など季節毎のイベント、また『食農調理塾』と称して自ら栽培したものを農園のスタッフと調理していただく料理教室、年に一度の収穫祭『楽農まつり』など、一般の方に少しでも農業に親しんでもらうための活動を行っています。

 またレストランよりさらにカジュアルに食事をしてもらうためのテラスハウスも設置、収穫物を使ったジャムや焼き菓子などの販売を行うほか、最近では農園ウェディングまでも(!)手がけています。農家であると同時に、五兵衛さんはデキるビジネスパーソンでもあるのです。



●若手を育てるのが今後の夢


「若手を育てるのが今後の夢」と語る五兵衛さん

 その根底にあるのは「環境にも人にも優しい農業の実践、そして日本の農業の持つ無形財産を次世代に伝えていくこと。そのためには、農業が他の産業と肩を並べて、ひとつのビジネスとしての地位を確立するべき」という揺るぎない信念。

 そんな五兵衛さんのもとには、地球の未来に危機感を持ち、環境に優しい農業を志す若者も多く集まっています。

「地球の未来を考え、農の価値を伝承していってくれる若手を育てるのが今後の夢」と語る五兵衛さん。農に関する講演会へのお呼びも多く、忙しい日々はまだまだ続きそうです。



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文・撮影:ジュニア野菜ソムリエ 尾崎美鈴