野菜人・果物人
野菜人・果物人第74回前編 吉野秀一さん(農業) 

第74回前編 吉野秀一さん(農業) 

畑から飛び出せ! 茨城県の若手農家の挑戦

●これからの農家は畑以外の活動も欠かせない


吉野農園 吉野秀一さん

ご職業 農業。茨城県農業研究クラブ連絡協議会参与
座右の銘 人と人とを繋げる架け橋になる

 茨城県筑西市、都市と農村が混じり合う地域に吉野秀一さんの畑はあります。畑の周辺には、人がいて、自然もある、一見農業に適した環境に見えますが、吉野さんは冷静に現状を分析しています。

「開発は進んでいますが、農業はおきざりになっています。私たちの手で盛り上げていかなくちゃいけない」

 吉野さんは、長年筑西市(旧下館市)で農業を営む吉野農園の後継者。故郷であり職場である筑西への強い想いを持っています。


仲間との出会いが自身の方向性を明確にしました

「これからの農家は畑にいるだけではいけないと思います。畑から出て、自ら情報を発信する、さまざまなネットワークづくりを行う。そんな活動が欠かせないでしょう」

 今の農業の課題を私に教えるように、そして自らにあらためて言い聞かせるように、吉野さんは語りました。



●仲間とのつながりでわかった農業の面白さ


茨城県の講演にて。農業の魅力を多くの人に発信

 吉野さんが畑以外での活動を意識するようになったのは、大学を卒業して直ぐ、就農一年目のこと。友人の誘いで、全国青年農業者クラブ連絡協議会(4Hクラブ)の全国大会に参加したことが、自身の一大転機になりました。

「日本各地の若手農業者が一同に会する行事で、農業に熱心な多くの人たちと出会うことができました。私の知らない、同じくらいの年齢の仲間が、全国各地で農家として働き、奮起していたのです。そんな彼らとの交流は刺激的で、農業の面白さややりがいをあらためて気付かされました」

 地元でも仲間づくりがしたいと考えた吉野さんは、早速4Hクラブの茨城県支部に所属。3年後には支部の代表に就任しました。
 現在は代表を退き、参与としてクラブのサポートを務めていますが、県での活動を通して地元にも多くの仲間が出来たと話します。

「農業は孤独と言う人もいますが、そんな人は畑を出て周りを見てほしい。必ず仲間はいます。やる気のある人間同士に垣根はありません。きっと直ぐ良い関係が築けるでしょう」



●農業のおもしろさを伝えたい


地元筑西のイベントにて。生活者との交流も積極的に

「裾野が広がらないと山は大きくなりません。農業のこれからを考えるには、『仲間をどう巻き込んでいくか』という活動も欠かせないと思うのです」

 そう話す吉野さんは、4Hクラブ茨城県支部代表を経たことで、県の農業普及センターや、農業振興公社などから講演の依頼を受けることもあります。新規就農業希望者や若手農家が集まるイベントで、農業のやりがいを伝えたり、今後の農業経営の在り方を提案しました。

「以前の農業のイメージは3K、『きつい』『くさい』『くらい』でした。しかし今は、『かっこいい』『稼げる』『感動がある』で新3Kと言い直されています。私はやり方次第でこれを実現できると思います。やっていて面白い仕事じゃないと誰もやりたがらない。私は農業の可能性や希望を多くの人に知ってもらい、共に農業をしていきたいです」



●他産業と協力して地域を盛り上げたい


自身の直売所では地元農産物加工品の販売もおこないます

 吉野さんの言う仲間とは農家だけではありません。他産業も農業を盛り上げていく仲間だと話します。

「今盛んに農工商連携という言葉が叫ばれ、農業・工業・商業が共に協力してビジネスを成立させるケースが全国的に増えてきています。これを地元でも是非実現させたい。農業だけがおきざりになっている現状をなんとかしたいのです」



 吉野さんは、農業を含めた地場産業の力を生かし、他地域からの集客を考えています。その地道な活動は先日初めて実現しました。筑西市の野菜だけを使った料理が食べられるパーティが、同市内のホテルで開催されたのです。

「地元の仲間と協力して実現することができたイベントです。その場には私たち農家も出席し、消費者の方々と交流しました。こうしたことから信頼関係が生まれ、筑西の農産物が広まればいいと思います」

 会場いっぱいの80人以上の方が参加、イベントは成功を収めました。しかしまだまだ課題は多いと吉野さんは考えています。

「現段階では小さな成功事例はありますが、まだ大成功した何か、というのはありません。いずれ農業発で『筑西市に来ればコレがある』という大きな売りを誕生させたいですね」

※<後編>では、吉野さんの考える農産物直売や、農業の可能性について紹介します。




文:ジュニア野菜ソムリエ 橋本哲弥
写真提供:吉野秀一さん
直売撮影:橋本哲弥
講演会写真提供:茨城県農業総合センター