野菜人・果物人
野菜人・果物人第73回前編 大塚好雄さん(マルダイ大塚好雄商店 代表取締役) 

第73回前編 大塚好雄さん(マルダイ大塚好雄商店 代表取締役) 

江戸野菜の復興を目指す江戸っ子の八百屋さん

●江戸野菜に魅せられた八百屋さん


大塚 好雄さん

ご職業 マルダイ大塚好雄商店 代表取締役
座右の銘 継続は力なり

「今年の品川カブね!ありがたいことに、よく育ってるよ!」

 江戸っ子口調でチャキチャキと話すのは、東京・品川にある「マルダイ大塚好雄商店」という八百屋を営む大塚好雄さんです。

 お店の前は旧東海道。このあたりは日本橋から一つ目の品川宿として栄えたところで、どこか懐かしく訪れた人をあたたかく迎えてくれる雰囲気があります。


店頭に貼られている江戸野菜の張り紙

 大塚さんの店は、一見ふつうの八百屋さん。でもよくよくみると「品川蕪」「千住葱」「亀戸大根」など、普通のお店ではあまり見かけない野菜の名前が張ってあります。こちらはすべて東京に古くから伝わる伝統的な「江戸野菜」。

 大塚さんはこの貴重な江戸野菜にみせられ、その普及をライフワークとしているのです。残念ながら江戸野菜が店頭にそろうのは11月半ば頃から。取材にうかがった時は、まだ畑で生育中の時期でした。



●かつて地元にあった「品川カブ」の復興


品川カブ

同じ江戸野菜でも金町小カブは丸い形です

金町小カブの説明をする大塚さん

 大塚さんが江戸野菜に興味を持ったのは5年ほど前。いつも通っている築地市場の取り組みに関わったことがはじまりでした。それから2年ほど経った頃、かつて地元品川に「品川カブ」というカブが栽培されていたことを区役所からの情報で知りました。

「地元品川の名前がついた野菜があったなんて、うれしいじゃないですか!」

 品川カブの他にも「大井ニンジン」や「戸越タケノコ」など品川周辺の地名のついた野菜が昔はたくさんあったようですが、今は種すら残っていない状態。一縷の望みは江戸時代に書かれた「成形図説」という書物の中にある品川カブの絵でした。その書物に描かれていたのは、よく見る円い形のカブではなく、まるで大根のような姿をしたカブでした。

「昔の絵を手掛かりに探していたら、小平のほうで"東京大長カブ"を生産している人がいてねぇ、このカブが絵にそっくりだったんですよ!」

 その時の様子を大塚さんは少し興奮気味に話してくれました。そして、書物に描かれた絵が証拠となり「東京大長カブ」として生産されていたカブは、生産者、市場、江戸野菜の研究会との話し合いを経て「品川カブ」の名前を使うことを許さることになりました。



●品川カブの商品化にむけて...


成形図説の品川カブの絵が彫られた携帯ストラップ


常にきれいに商品を並べる大塚さん

 大塚さんのお店に品川カブや亀戸大根などの江戸野菜が並んだとき、多くのお客様はびっくりしたそうですが「懐かしい」という人もいたとのこと。今では大塚さんの奥様が漬けた品川カブの漬物にもファンができて、その時期を楽しみに待っているのだそうです。

 もともと冬場のビタミン補給のため、漬物にされることが多かった「品川カブ」ですが、大塚さんは漬物だけではもったいないと地元のお店を説得し、ケーキや餃子、カブまんじゅうなどの商品化もすすめています。

「地元の活性化につながるって、一緒にがんばってくれてるんですよ。ケーキは評判 もよくて、テレビの取材もきましてね。今作ってもらってるカブまんじゅうも、ほん とにうまいんだ! それから品川カブの絵が彫ってある携帯ストラップもできあがった ところなんです」

 品川カブの話になると大塚さんはとまりません。しかし、そこから伝わる熱い思いは、周りの人を元気にさせるパワーにあふれていました。



※<後編>では、大塚さんの品川カブを通した食育活動とこれからの夢をお伝えします。




文・撮影:野菜ソムリエ 霜村春菜