野菜人・果物人
野菜人・果物人第72回後編 加藤宏一さん(東京青果株式会社 営業本部) 

第72回後編 加藤宏一さん(東京青果株式会社 営業本部) 

熱い想いを胸に、市場とともに歩んだ33年間

●仕事で己を鍛えあげたい!


加藤 宏一さん。故郷、青森産のニンニクを手に。「香りを楽しむなら国産を」

ご職業 東京青果株式会社 営業本部
営業情報管理課
座右の銘 和して同せず

 青森県青森市出身の加藤さんは、現在57才。大学進学で上京し、経済学部でマルクス主義を学びました。
 全共闘世代の残り香を嗅いではいるものの「ガキ大将にはなれないちょっと醒めた世代」。その加藤さんが、就職先に東京青果を選んだ理由は、「農業が盛んな郷土に役立つ仕事」だから。
 また、「職業で自分を鍛錬したい」という思いもあり、現場主義、たたき上げといった言葉が似合う市場で働くことを願ってのことでした。

  その根底には、本音では今更時代遅れな・・と醒めつつ学んだマルクス主義の、「弱いものを助けるという思想だけは、体にしみついていた」からとのこと。

 市場は、ある意味弱者である小規模農家や消費者の生活を支えるシステムを備えたところ。その舞台で、卸業としてトップを走る東京青果で働くことに迷いは無かったそうです。

「正義感の強い人がけっこういる職場だと思います」。



●「どうすれば相手のためになるか?」を考える


韓国産のパプリカを手に。パプリカはマリネに。炒め物などには、火の通りやすい赤ピーマ ンを。

 競り人=現場で叩き上げ、を想像して入社した加藤さんの最初の配属先は、意外にも人事部。10年目に「一般人にもわかり易く情報を届けるには、現場を知らない人間がいい」という社の意向?で現在の部署に配属。以降、会社と青果物のPRに務めてきました。

 その加藤さんが仕事をする上でのキーワードに掲げているのが、「全てのシステム(仕事)は相手のために」ということ。野菜の選び方についても

「スイカを弾いた音を聞き分けるなんて素人には無理! 馴染みの八百屋さんに選んでもらうのが一番」。

 それより、市場で得た旬の野菜の情報や、料理好きが高じて知り得たおいしい食べ方など、机上ではなく体験から得たもので、本当に視聴者のためになる情報か? を吟味して伝えることにしています。



●「すりきれるまで読んだ」愛読書


加藤さんが事務局を務めている、善玉菌を活用した自然農法について研究をしている「EMそだち栽培確認委員会」での視察。

EMさいばいで育てられた EM金時。「農家の努力を理解した上で、その真心を消費者に 正しく伝えてあげなければ・・」と真剣に農家の説明に耳を傾けます。

 もともと、学究肌で読書好きな加藤さんが、繰り返し読んだという愛読書が、『ルポルタージュ よい野菜〜全国91産地を歩く』(※1)

 単に、産地の情報だけでなく、県民性と絡めた考察など、「読み物としても実におもしろく、書き手の視点がすばらしい!」と手放しでの褒めよう。

 実は、加藤さん自身も、各地域の農業試験場の始まりについて、記録には残されていない前史に興味を持ち、独自に調べています。「いずれは、それらを書物にまとめられたら・・」など密かに夢を企てておられるようです。

 ものごとの始まりにはそれが必要とされた原点が隠されているもの。 市場や職場を取り巻く環境は、時代に合わせて変わりつつありますが、根っこにある原点への思いは変わらない・・座右の銘の「和して同せず」に、和やかな笑顔の下に隠された、そんな気骨に触れたように思います。



(※1)中西昭雄/編 日本経済新聞出版社

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文・撮影:ジュニア野菜ソムリエ 渡辺美穂
(EM栽培写真2点)写真提供:加藤宏一さん