ベジフルライフ・ストーリー〜野菜ソムリエの活躍〜
ベジフルライフ・ストーリー〜野菜ソムリエの活躍〜萬谷 利久子さん(シニア野菜ソムリエ)

萬谷 利久子さん(シニア野菜ソムリエ)

北海道農産物を全国へ広げたい。めざすは生産者の「明るい相談員」

●北海道遺産に選定された「ラワンぶき」を全国へ広げたい


シニア野菜ソムリエ
萬谷利久子(ばんや りくこ)さん


 大きな大きな、高さ2〜3mにまで成長する「ラワンぶき」。北海道足寄町特産の『ラワンぶき』を全国へ広めようと奔走しているのが、シニア野菜ソムリエの萬谷利久子さんです。

「あくがないので、生のまま天ぷら、さっとゆでてサラダ、炒めもの、つけもの、どんな調理法でも美味しく頂けます。全国の方に知ってもらいたいですね」
かわいい子供の話をするように、あたたかい笑顔いっぱいで話して下さる萬谷さん。
 ラワンぶきは直径10cm、高さ2m、6月の3週間しか収穫できない日本一大きなふきで、青果物では唯一『北海道遺産(※1)』に選定されているそうです。

 しかし、栽培には手もかかり、生産者の経営も多難。なんとか、全国区のブランドにして、ラワンぶきの美味しさを広めたいとレシピを開発し、今年初めて、北海道以外へ進出。東京での販売は知名度ゼロにもかかわらず、大好評で完売したそうです。



●生活者と生産者をつなぐ多様なイベントを企画


全国ブランドをめざして東京で「ラワンぶき」を販売する萬谷さん

 テレビやラジオ番組のパーソナリティとして活躍されていた萬谷さんが、野菜ソムリエをめざしたきっかけは、北海道第一号の野菜ソムリエ誕生という新聞記事でした。

「実家が寿司屋で小さい頃から食への好奇心は強かったですね。レストランへの取材など、食がらみの仕事も多く、また、野菜ソムリエというオシャレなひびきにも惹かれて、迷わず受講を決意しました」

 野菜ソムリエ資格取得後は、生活者と生産者をつなぐための様々なイベントを企画、プロデュースしています。産地を訪ねるバスツァー、農家のお母さん達の料理コンテストや料理教室の開催。セミナーでの講師活動やレストランへの食材のコーディネート。ファーマーズファッションショーや農家のせがれの婚活のお世話もなさっているとか。

 また、ラジオ番組では「北海道野菜通信」や「野菜レシピ」のコーナーを担当し、単なる野菜の知識だけではなく、「動物園の動物が食べる野菜って何?」「神宮の神様が食べる野菜は?」といった興味深い切り口から野菜を紹介しています。



●生産者の『明るい相談員』になりたい

北十勝の女性生産者の研修会で講師を務める萬谷さん
生産者と栄養士の交流会のコーディネーターを務めたバスツァー
旭川「たいせつマルシェ」でカムイ地区のさくらんぼを販売

 そして、頻繁に産地を訪れて生産現場の実情を知るようになった萬谷さんが、最高峰のシニア野菜ソムリエを目指すきっかけになったのは、「生産者の方々にビジネス的にもアドバイスできるようになりたいと思ったから」と話します。

 北海道はおいしい野菜や果物の宝庫なのに、採算が取れずにいる生産者が多いという現実を様々な生産現場を訪れて実感。生産者の方々は作ることに熱心で、どこで、どうやって、どんなふうに売ればいいかという、流通経路や販売方法には関心が薄い場合が多いと気づかれたそうです。そのため、多くの農産物や加工品が埋もれてしまっているのが現状です。

 シニア野菜ソムリエを取得した萬谷さんは、、商品開発や量販店でのイベント企画などを通して、北海道農産物をアピール。旭川市ではそれまで知名度がなかった現地特産のさくらんぼやプラムなどの販売をマルシェでお手伝いして、知名度アップに貢献。その知識や実績は、確実に生産者の方々の力となっていて、今では多方面から相談のメールが届くようになったそうです。

「例えば、トマトジュースが売れないという相談。美味しいのにビンが大きすぎるのですね。冷蔵庫に入りにくかったり、持って帰るのに重すぎたりすると地下鉄利用者エリアのスーパーでは売れないこともある、という具体例をお話しします。とお話します。買う側の生活者の目線で生産者へもアドバイスしていきたい。そして、実践的に生産者の方々のお役に立つ『明るい相談員』をめざしたいですね」



●北海道農産物のブランド化、ヒット商品化へ

ビール会社の感謝祭イベントで野菜ソムリエのプチセミナーを開催

 ラワンぶきが成功したら、他の北海道の野菜、果物にもつなげていきたい。例えば、りんご。りんごは青森という強力なブランドがあるので、北海道でたくさん収穫されても余剰状態。今後はりんごのブランド化、またはヒット商品を生み出したいと考えています。また、

「ホワイトアスパラガスが高価なのは、一本、一本手で大切に収穫しているから。その辺の生産者の苦労も生活者に伝えていきたいですね。シェフに伺ったのですが、ホワイトアスパラガスは牛乳を入れてゆでるとよりクリーミーになりますよ」

 萬谷さんは、野菜をより美味しく食べるための熱意や知識が実に豊富です。生産現場を自分の足で歩く実行力と生産者や農産物への真摯な思いの賜物でしょう。



札幌市内のスーパーで開催された「ラワンぶき」の販促イベント

「産地で生産者の方々のお話を伺い、その空気感、哲学、人間としての圧倒的な魅力にふれられることで、随分、成長させてもらっています。また、野菜ソムリエの横のつながりにも助けてもらっていますね。野菜ソムリエになったことで、かけがえのない『人の財産』をいただいています」

萬谷さんの生産者への敬意、北海道農産物へのあふれる思いは、ラワンぶきのように、空高くどこまでも大きくなって、全国へ広がっていくにちがいありません。



(※1)『北海道遺産』とは、北海道知事が提唱し、次の世代に引き継ぎたい北海道民の宝物として選ばれたものです。「ラワンぶき」は2001年に北海道遺産に選定されました。



文:野菜ソムリエ 田尻良子
写真提供:萬谷利久子さん