菜果図録
菜果図録Vol.75 きゃべつ

Vol.75 きゃべつ

日本のサラダ文化の原点 きゃべつ

日本のサラダ文化の原点 きゃべつ


 春の訪れを感じる野菜といえば、春きゃべつ。青果売り場で、ふんわりと巻いた緑色の春きゃべつに出会うと、それだけで気持ちが弾みます。
 きゃべつはアブラナ科を代表する野菜で、大西洋沿岸や地中海沿岸のヨーロッパ原産。青汁の材料として知られるケールがその祖先にあたり、古代ギリシャやローマでは薬用として用いられていたのだとか。その後、ヨーロッパ各地に広まって食用とされるようになり、ドイツのザワークラウト、ロシアのボルシチ、中国の回鍋肉など、世界各国の郷土料理にも欠かせない食材となりました。
 日本への伝来は江戸時代ですが、食用として栽培されるようになったのは明治時代に入ってから。文明開化とともに西洋料理が伝わり、トンカツとともに付け合わせとして添えられたきゃべつの人気も広まったのだそうで、日本で生野菜が食べられるようになったきっかけともいわれています。
きゃべつは、北は北海道から、南は沖縄まで、すべての都道府県で生産されています。農林水産省が発表した平成25年産の収穫量によると、春きゃべつの第1位は愛知県の65,300トンで、以下、千葉県、神奈川県、茨城県と続きます。ちなみに、冬きゃべつの第1位は愛知県が断トツで、全収穫量の約1/3を占めています。一方、夏秋きゃべつの上位は全収穫量の1/2以上を占める群馬県などで、高原きゃべつの名で親しまれています。

春のきゃべつは生が一番

 きゃべつに含まれる栄養素で特に注目なのがビタミンCとビタミンU。免疫を高め、美肌を守る働きなどで知られるビタミンCは100gあたり41mgも含まれ、別名キャベジンとも呼ばれるビタミンUは胃の粘膜を健やかに保つ抗潰瘍成分として知られています。ただし、いずれも水溶性なので、生のまま食べるのがおすすめです。
また、がんの予防や抑制効果が期待されるイソチオシアネートという成分の含有量が、ニンニクに次いで多いことにも注目。アメリカ国立がん研究所が発表した、がんを抑制する食品群(デザイナーフーズ)のうち、きゃべつは最重要ランクに位置しています。
春きゃべつを選ぶ際は、ずっしり重い冬きゃべつとは逆に、巻きがゆるい軽めのものを。時間とともにビタミンなどの栄養素は減少してしまいますので、購入後はできるだけ早く食べるのがポイント。ほんのり甘いコールスローなら一度にたっぷり食べられますよ。

【野菜ソムリエのミニレシピ】きゃべつとオレンジのコールスロー
 きゃべつとにんじんは千切りにし、全体に塩少々をふり、5分ほどおいてから軽く水気を絞り、薄皮をむいたオレンジを加え、マヨネーズ、はちみつ、粒マスタードでさっと和える。

全国各地で栽培される品種いろいろ

 春玉と呼ばれる春きゃべつ、寒玉と呼ばれる冬きゃべつ、夏に出回る高原きゃべつの他にも、まんまるで葉が肉厚なグリーンボール、色鮮やかな紫きゃべつ、ジャンボきゃべつこと北海道伝統の札幌大球、葉が縮れたサボイキャベツ(ちりめんきゃべつ)、葉の脇につく脇芽を食す芽きゃべつ、芽きゃべつとケールから生まれたプチヴェールなど、驚くほどに種類がいろいろ。葉ではなく茎の部分を食用にする、まるでカブのような姿のコールラビも、きゃべつの仲間です。季節ごとに店頭に並ぶ旬のきゃべつをたっぷり食べて、体の中から健康に美しくなりましょう。


文 / 写真撮影:野菜ソムリエ 堀基子