菜果図録
菜果図録Vol.74 かぶ

Vol.74 かぶ

天下分け目の関ヶ原で二分される かぶ

天下分け目の関ヶ原で二分される かぶ


 アフガニスタンおよびヨーロッパ南西部が原産地とされる「かぶ」。日本へは、1000年以上も前に渡来しました。栽培の歴史が古いことから、地域ごとに実に多くの品種が存在しますが、朝鮮半島経由で渡来した「ヨーロッパ型」は東日本に、中国経由で渡来した「アジア型」は西日本に多く定着し、一説によると関ヶ原付近を境に二分されているのだそうです。
 ふっくらと丸くハリのあるもの、皮が白くなめらかなもの、茎や根がピンとしているものが新鮮な証です。葉の部分から傷みはじめるため、購入後はすぐに葉と実を切り離し、それぞれ新聞紙に包んで冷蔵庫の野菜室で保存するといいでしょう。

葉の部分は緑黄色野菜、実の部分は淡色野菜

 淡色野菜である白い実の部分には、ビタミンやカルシウム、カリウムの他に、消化を助ける働きのある酵素アミラーゼが含まれています。実の部分は、加熱するとトロトロにやわらかくなり、生や半生でいただくと独特の歯ごたえが、すりおろして卵の白身と合わせてかぶら蒸しにすると上品な舌触りを感じるなど、調理法によって様々な食感の変化を感じられる野菜です。
 一方、緑色の葉の部分は緑黄色野菜。ビタミンやミネラルは、実よりも葉のほうが豊富に含まれています。軽く塩茹でして水にさらし、水気を切ってからラップに包んで冷凍しておくと、使い勝手がよく便利です。

【野菜ソムリエのミニレシピ】小かぶのガーリックグリル
 かぶの葉を切り落として、くし切りにします。フライパンにオリーブオイルとみじん切りしたにんにくを入れて熱し、かぶを入れて表面をさっと焼き、塩こしょうを軽くふって完成です。シャキシャキ食感がお好みの方は強火で、ほくほく食感がお好みの方は中火で加熱するとよいと思います。残ったかぶの葉も一緒に炒めたり、塩麹をまぶして浅漬けでいただいても美味です。

環境にやさしい焼畑農法でつながれる伝統野菜「藤沢かぶ」

 京都の「聖護院かぶ」、滋賀県の「日野菜かぶ」、奈良県の「飛鳥あかねかぶ」、北海道の「大野紅かぶ」など、全国には多種多様な土着のかぶが存在し、その数は約80種類にもおよびます。
 なかでも、興味深いのは、細々と種がつながれてきた在来品種「藤沢かぶ」です。ひょろりとしたスタイルに濃いピンクと白のツートーンがかわいらしく、ほんのり甘くパリっとした食感は、漬け物でも生でも楽しめる味わい。作家・藤沢周平のペンネームの由来ともなった山形県鶴岡市藤沢地区の山中で、伝統的な焼畑農法によって栽培されています。焼畑というと自然破壊のイメージがありますが、それは大いなる誤解。熱によって除草・殺菌・土壌改良がされるため、無農薬・無肥料の栽培ができる有機農法であり、森林管理のために計画伐採された区画を利用することで、合理的な循環型農業でもあるのです。とはいえ、延焼を防ぐための下準備、周囲の木に水をまきながら斜面上部から火を放っていく、発芽を促すためにまだ火がくすぶっているうちに種を蒔く等、多くの手間と時間がかかる過酷さ。それも、一年で最も暑さが厳しいお盆の頃に行う急勾配の斜面での作業はかなりの重労働です。生産者さんの熱き思いがなければ、消えてしまうかもしれない稀少な野菜といえるでしょう。

文 / 写真撮影:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ