菜果図録
菜果図録Vol.72 文旦

Vol.72 文旦

分厚い皮まで食べきりたい 文旦

分厚い皮まで食べきりたい 文旦

 文旦(ぶんたん)の原産地とされるのは、マレー半島、インドシナ界隈。日本には江戸時代初期までに渡来したとされ、各地で独自の品種が生まれました。別名は「ざぼん」「じゃぼん」「ぼんたん」。地域や時代によっていくつかの呼び名が見受けられます。柑橘類のなかではもっとも果実が大きく、直径20cm以上で重さが2kgを超えるものもあります。
 文旦という名称は品種群の総称で、主な品種は高知県の「土佐文旦」、鹿児島県の「阿久根文旦」など。「大橘(おおたちばな)」という品種は、熊本県では「パール柑(天草文旦)」、鹿児島県では「サワーポメロ」という名称で親しまれています。他に、大人の頭ほどもある巨大な「晩白柚(ばんぺいゆ)」、ボコボコした外観の「獅子柚(ししゆず)」など個性光る品種もあり、文旦の血をひく柑橘には、グレープフルーツ、ナツミカン、ハッサク、オロブランコ(スウィーティ)などがあります。
 目利きのポイントは、外皮が滑らかで張りがあり、ずっしりと重みを感じること。時々外皮にみられる傷やうすいシミは味にほとんど影響がないため、自家用で購入する際は気にする必要がないでしょう。購入後は、風通しのよい冷暗所に。長期保存する際はビニール袋に入れて冷蔵庫で保管しましょう。

マーマレードに砂糖漬け。皮も捨てずにいただきましょう

 甘みと酸味の他、さわやかな香りやほのかに感じるほろ苦さも文旦が持つ味わいの特徴です。この独特な苦みはナリンギンという成分で、免疫力を高めるほか、食欲を抑える働きもあります。また、果皮内側の白い部分(アルベド)が分厚いのも特徴のひとつ。捨ててしまいがちな部分ですが、産地では砂糖で煮てざぼん漬け(文旦漬け)として食され、硬い外皮はマーマレードに利用されています。

【野菜ソムリエおすすめレシピ】文旦と鶏ササミの和え物
 文旦は外皮と薄皮をむいておきます。鶏ササミは日本酒(または白ワイン)をふりかけて電子レンジやセイロで蒸し、粗熱をとっておきます。食べやすいサイズにした文旦と鶏ササミ、ソルトリーフ(またはルッコラ)を、エクストラバージンオリーブオイル、塩、こしょうをふって混ぜるだけ。文旦のやわらかな酸味が効いたさわやかな和え物に仕上がります。

地元で愛されているさっぱり系柑橘「パール柑」

 九州や四国の各地で様々な品種へと分化がみられる文旦のなかで、熊本県上天草市の名産「パール柑(天草文旦)」は、個人的にお気に入りの品種です。真珠のように美しい外皮と、風光明媚な上天草に架かる天草五橋(通称:パールライン)が、その名の由来。直径15cmほどの大玉で、さっぱりとした上品な味わいが特徴。さわやかな香りにも癒されます。以前この地で出会って以来、すっかりとりこになりました。なお、同じパール柑でも地域や生産者によって栽培や出荷へのこだわりが様々にあります。

 例えば、上天草市大矢野町維和地域では、実が美味しくなってくる時期を見計らい、2月半ばから出荷を開始するのだそう。販売期間が限られてしまうデメリットがあるものの、あえてじっくりと育ててから収穫し上質なパール柑を届けるというこだわりです。
 この地域でパール柑を栽培している鬼塚正義さん(上天草市認定農業者会会長)によると、実から柑橘のさわやかな香りがするようになってから食べると香りも楽しめ、実もおいしく食べられるとのこと。食べごろサインがお部屋にただようさわやかな香りとは、なんとも素敵な情報ですね。





文 / 写真撮影:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ
取材協力・写真提供(※印):熊本県上天草市役所