野菜ソムリエの思ひ出の味
野菜ソムリエの思ひ出の味 >地を這うトマト「すずこま」

地を這うトマト「すずこま」

野菜ソムリエ星昭一さんの思ひ出の味

 2012年の夏。コミュニティみやぎ野菜ソムリエの会で開催している産地交流部会に参加した日のことである。次の予定まで少し時間が空いたため、近くにどこか面白いところはないかと、野菜ソムリエ仲間で仲卸会社の社長さんに相談をした。そして、急遽立ち寄らせてもらうことになったのが、宮城県大崎市鹿島台にある「すずこま」というトマトの温室だった。

430_memory.jpg  温室に足を踏み入れた瞬間、一同愕然。一般的なトマト苗は天井にむかって垂直につるを這わせて栽培するのだが、目の前のトマト苗は倒れて地を這っている。室内だから強風の影響を受けたわけでもなかろう。まさか手抜きでもしているのだろうか?みんなの頭の中をクエスチョンマークがぐるぐると回っていた。しかし、その謎はすぐに解決した。目の前で倒れているトマト苗はすずこまという品種で、生育上の特性から、あえて地を這わせて栽培していたのであった。岩手県の(独)東北農業研究センター生まれでF1種ではなく、種を自家採取できるという点も興味深い。まだあまり知られていないトマトの新品種と出会えるのは、野菜ソムリエ冥利につきるものだ。

 すずこまは、糖度は決して高くないが、ゼリー部が少なく果肉部分が多い。加熱調理に向くトマトだという。衝撃的な出会いをした当日は、残念ながら試食は出来なかったのだが、日を改めて送ってもらい、トマトと卵のふわふわ炒めを作ってみた。これまで食べたことのあるトマトとはまったく違う味の濃さを感じた。これは、「野菜ソムリエとして応援すべきだ、この魅力を多くの生活者に伝えたい!」そんな気持ちがますます強くなった。
 早速、その年の秋には、仙台市内ですずこまの料理教室を開催。コミュニティの会員と一般生活者が一緒に料理を作り、そのコクとうま味を感じてもらった。その後、すずこまトマトのシンポジウムや、レストランでの賞味会も開催。参加希望が押し寄せて増席するほどの人気であった。また、2014年春には、使われていなかったビニールハウスをコミュニティの皆で借り受け、自分たちでも植え付けから収穫までを体験してみることになった。日照不足などから予定収量は大幅に下回ってしまったが、これもまた良い経験だ。ダイエットをきっかけにして、取得へ至った野菜ソムリエの資格。野菜中心の生活でメタボ体型が少しスリムになったが、すずこまとの出会いを機に経験値はふくよかになったように思う。

星昭一さんのプロフィール
宮城県在住。野菜ソムリエ。2007年に、野菜ソムリエの資格取得と同時に、コミュニティみやぎ野菜ソムリエの会を仲間とともに立ち上げる。事務局長として、仮設住宅への被災地支援活動「笑顔のチョコベジ」や小学校での食育活動、すずこまトマトのブランディング活動など、様々な活動をしている。
みやぎ野菜ソムリエの会のブログはこちら
取材 / 文:野菜ソムリエ / ベジフルビューティーアドバイザー タナカトウコ