よつばちゃんの食を楽しむ取材ノート。

2014年9月24日

イギリス生まれのクッキングアップル「ブラムリー」って、どんなりんご?

日本の秋の代表果といえば...

りんご!
(ほかにも柿とか、早生の温州みかんとかいろいろありますが...)

日本に限ったことではなく、世界的に多く生産されている果物のひとつですね。日本では果物を生食することが一般的で、りんごもしかり。しかし、ほかの国では料理向きのりんごも多く生産されています。生食用のりんごを「イーティングアップル」や「デザートアップル」と呼ぶのに対し、料理向きのものを「クッキングアップル」と呼んで区別しているようです。

日本でも酸味の強い紅玉が加熱調理に向くとされていますが、紅玉は生食することも一般的です。ところが、生の状態では酸味や渋みなどが強く、加熱調理をすると、よりおいしさが際立つのがクッキングアップルなのです。近年、日本でも複数のクッキングアップルが栽培されるようになってきました。

そのひとつがブラムリー(Bramley's Seedling)。

無骨という形容詞も似合う、ごつごつとしたビジュアルが逆にかわいらしく、インテリアになりそうなフォトジェニックさ。大きいものはひとつが300gほどにもなります。8月下旬から収穫され、適切に保存をすれば家庭内でも年内はおいしく食べられるようです。糖質の含有量が少なく酸味が強いですが、加熱後も香りが残ること、またお菓子だけではなく塩味の料理にも向く汎用性の高さも魅力のひとつです。

このりんご、生まれはイギリス・ノッティンガム州、200年ほど前に偶然実生として誕生しました。現在ではイギリスで生産されるりんごの約45%も占めるというから、その支持率の高さがうかがえます。日本には、明治時代にほかの品種とともに導入された過去を持ちますが、当時は普及しなかったようです。その後、1990年に再度日本に持ち込まれ、長野県小布施町で商業栽培が始まりました。国内での栽培歴は20年と少し、今ではブラムリーの持つ特徴や風味に惹かれる人が、じわりじわりと全国に増えつつあります。現在では長野県のほか、北海道や岩手県で栽培されています。

興味深いのは古い品種がそのまま残っているということ。日本では、りんごの品種改良が盛んで、毎年のように新たな品種が誕生していますが、ブラムリーは200年も前に誕生した品種です。今もなお人気があるということは、この個性は抜きんでているということなのでしょうか。

写真提供/小布施屋

さて、その味わいは。まずは前評判を無視して、生のままガブリ。

.........!

し、し、渋い!

そして、酸っぱい!!

収穫したての若いものだったこともあり、歯の裏がキシキシっとします。そして、今までに味わったことがないほどの際立った酸味。これが噂に聞いた酸味と渋みなのかと身をもって体感した次第です。とはいえ、ただ酸っぱいだけではなく、独特の香りも感じられます。続いてジャムに挑戦することにしました。

加熱すると煮溶けるというので、大胆に大きく切って挑みます。ざく切りにしたブラムリーを鍋に入れて加熱します。するとどうでしょう。ものの数分のうちに煮溶けてしまいました。これほどまでに果肉がほどけるように溶ける品種を見たことがありません。この感覚はクセになりそうです。糖度40%ほどに仕上げてみましたが、あの強烈な酸味はどうでしょうか。




これほどまでに「甘酸っぱい」という形容詞が似合う果物はほかにあるでしょうか。きっちり甘みを加えましたが、それでも強烈なまでに自己主張してくる酸味の押しの強さと言ったら、たまりません。今回はジャムにしましたが、一般的なジャムの味わい方以外にも、チーズや、肉料理のソースにも合いそうなパンチの強さです。しかも、独特の香りがふわりと漂い、香りでも酔わせてくれます。



ほかにはない味わいに、熱烈なファンが多いというのが分かった気がしました。

このブラムリー、「ブラムリーファンクラブ」が存在します。とはいえ、一般的な"ファンクラブ"の認識とは違い、ブラムリーを愛する3人のユニット名であり、彼らが管理人となっているブログのタイトルでもあります。このブログの充実ぶりには目を見張ります。生産者の方々と密に連絡を取り、産地での生育状況や、ブラムリーの楽しみ方、このりんごを使った加工品が食べられるお店の情報などが掲載されています。日本国内で得られるブラムリーの情報量では、このブログ以上に充実しているところは見当たりません。そして、彼らのブラムリーへの愛情の深さも。

こうした充実ぶりからか、自然と周りには同じくブラムリーに魅せられた人々が集うようになりました。ブログ上で情報を共有したり、ときにオフ会を開いたり。同じく"ファン"の方々には洋菓子の講師やティーインストラクター、フードライターなど、さまざまなジャンルのプロも多く、それぞれが持つ情報量の深さには驚かされます。

ブラムリーファンクラブの3名は、「ブラムリーという存在から料理用りんごというもう一つの味わい方を知り、膨大な品種を生んだイギリスのりんごの歴史に触れることができました。ブログを始めたことにより、このりんごを通じて、多くの出会いもありました。ブラムリーの楽しみ方だけではなく、食全般の知識をお互いに共有して驚いたり、楽しんだり。ファンの皆さんを通して、思わぬ人とつながったり、意外な出会いも多くあったことが嬉しいですね」と語ってくれました。

恐るべし、ブラムリー。

たかがりんごの一種とあなどるなかれ。

日本ではまだまだなじみが薄いクッキングアップルですが、ブラムリーを介して、広く、大きな世界が広がっていると感じた秋の日なのでした。


取材協力/ブラムリーファンクラブ
http://blog.livedoor.jp/apple5555/

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