2009年9月14日
ヒマラヤの岩塩に出会った日のこと。
「旅の思い出」、と言ったら、普段から「食」に興味の高い皆さんでしたら、きっと、その土地土地で出会った「食べ物」について、何よりも真っ先に、お話が始まるのではないでしょうか。
こんにちは、調味料マイスターの神林春美です。
私も、「旅の思い出」のひとつとして、どこかに記しておきたい、「塩」との出会いがあります。
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それは、今から数年前。
「カトマンドュ」というその神秘的な街の名に惹かれ、たぶん...、そのくらいの単純な理由で、数日間訪れたネパールでの出来事です。
ほとんど情報を持たず、ビザも持たずに、降り立った空港で、かろうじて、3泊4日だけの滞在を許された、ネパール。
バックパックを背に、ヒマラヤ登山を目指す外国人も多い中、たった4日間だけそこに居れる私は、ただただ市街地を歩きまわる時間だけを過ごしていました。
どこか目的地があるわけでもなく、時間を気にするわけでもない、一人旅。
そんな一人の気ままな様子は、時に、誰かが話しかけてくれる、そんなキッカケにもなるものです。
その日も、私は、朝から、泊っているゲストハウス近くの、なぜか日本語で、(たしか...)「ちぐさ」という名前の喫茶店に入り、カウンターで、コーヒーとトーストを食べていました。
「ご旅行ですか?」、そう私に、日本語で話しかけてきたのは、50代位の女性でした。
この地に慣れているような振る舞いを見て、予想通り、というか話を聞けば、その女性はネパールに何度も足を運んでいる方。
鹿児島で活動するNPOの方で、年に数回はネパールに赴き、子供の学用品などを届けているのだと話してくれました。
ネパールの貧困や、「行った方がいいわよ...」というお寺、治安についてなど、いろいろお話をしてくださった、その女性。何でも気持ちよくサバサバとお話してくれる様子に、私も「日本に持って帰るとしたら、何かいいものあります?」と、質問をしました。
「よく聞かれるんだけどね、」という言葉の後、待っていた質問の答えは、
「やっぱり、ヒマラヤの塩よ」。
「塩」 ――。その時の私は、その「塩」という言葉に、ほとんどピンときていませんでした。
そういえば、『地球の歩き方』にも載っていた気もするけど...。
でも、山へ向かう目的のない私には、しっくりこない答え。
しかも、無知な私は、「海じゃなく、なぜ山?」、そうまで思ったほどです。
聞けば、その塩は、3億年も昔、かつては海底だったその地に残る塩の結晶で「岩塩」と呼ばれるもの。
ピンクの色がキレイなのよ、と。
「あれで、お肉を焼くと、本当に美味しい。
値段も高くないし、腐らないし、いいんじゃない」。
実際、ふらふらと市街地を歩くだけで、小さな商店といった雰囲気の岩塩専門のお店を、何軒か見つけることができました。
初めて見る大きなブロック型の塩は、本当に宝石のよう。
「塩は海水からできるもの」、それが常識だった私には、とても衝撃でした。
実際に、その岩塩をお肉で焼いて食べたのは、それから、ずいぶん経ってからのことでしたが、まず、硫黄のような匂い、そして、塩が塩辛くない、そのことに驚きを。
塩に、しょっぱい以外の「味」も感じたのは、初めてだったかもしれません。なんだかまろやかで、お肉が、この岩塩を振りかけるだけで、一気に、うま味を爆発させるかのよう。本当にうまい。感動でした。
実は、数年経った今も、その塩を大切に使っている私。
「3億年もの時を経た塩」、そんなことを教えてもらうと、なんだか、大胆には使えずにいます......。


