「ふくらむふくらむ」byパンアドバイザー養成講座

2016年7月19日

日本のパンの歴史は銘菓にあり

「子供の頃に食べたお八つを思い出すままに挙げてみると次の通りである。

 ビスケット。......。チソパン。木ノ葉パン。...。味噌パン。玉子パン。...。」

 これは、向田邦子著『父の詫び状-お八つの時間-』(文春文庫)の一部である。向田邦子氏は昭和411月生まれなので、もし存命なら86歳だ。東京生まれだが父親が転勤族のため、鹿児島、香川、宮城と全国各地を転々として成長したらしい。玉子パンはともかく、チソパン、木ノ葉パン、味噌パンなるものを私は知らないのでネットで調べてみた。

 チソパン 会津周辺で造られている、紫蘇風味の甘しょっぱい駄菓子。

 木ノ葉パン 銚子周辺で造られている、焼き菓子。

 味噌パン 宮城〜福島〜千葉周辺で造られている、焼き菓子。

「パン」とは、『小麦粉(またはライ麦その他の穀粉)を主原料とし、これに水とイーストなどを加えてこね、発酵させてから焼き上げた食品(広辞苑)』のことを言う。玉子パンも含め、これらは基本的に原材料に酵母を使用していないため、パンではなくお菓子である。いずれも地方銘菓として菓子舗で販売されていた。

それなら、名前の末尾に「ぱん」がつく銘菓が他にもあるかも知れない。さらにネットで調べてみた。(以下、あいうえお順)

 かたパン(敦賀、香川)

 くまたパン(福島)

 ぞうりパン(福島)

 鳥パン(諏訪)

 花パン(桐生)

これらのうち、鳥パンのサイトにその由来が詳しく記載されていた。私はそれを読んで、日本のパンの歴史に関わるある注目すべき点に気付いてしまった。

鳥パンの由来は以下である。明治時代初期、諏訪地方の菓子補の祖先が江戸に修行に行き、パンや西洋菓子の製法を学んだ。帰郷したのち、鳥パンを考案した。それは酵母を使用していないので本当はパンではない。しかし、西洋の文化を感じさせるネーミングと美味しさで評判になり、諏訪地方銘菓となったのである。おそらく、これと同じようなことがそれぞれの地方で起こったのだ。

乾燥酵母があったとしても手軽に入手するのは難しかっただろうし、冷蔵庫や微生物学の知識のない当時の日本で、酵母を安心かつ安定的に自家培養するのも不可能だろう。しかし本物のパンでなくても、江戸帰りの和菓子屋の旦那が考案した○○パンは、それぞれの地方で愛され銘菓となっていったのだ。

 このことから、一つの結論が導き出される。日本のパンの普及の歴史は、パンもどきの菓子、○○パンが地方に広まることから始まった。パン職人が各地でパンをつくり始めたのはもうしばらく後のことであり、まずは、パンの製法を学んだ和菓子職人によってパン菓子が全国に広まり、それから徐々に本物のパンやケーキを知る人が増えるにつれて、専門のパン屋やケーキ屋へと枝分かれしていったのだ。

 つまりは、日本のパンの歴史は銘菓にあると言えるのである。

 

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 末尾にパンがつくもの

パンアドバイザー&野菜ソムリエ
 むぎの きく
http://muginokiku.seesaa.net/


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