「バナナが大事!」byアスリートフードマイスター 公式ブログ

2017年1月25日

現役 高校野球部監督の挑戦(後半)『成長と進化』

「アスリートフードマイスター3級の岡嵜雄介です。
前回から2回にわたり「現役 高校野球部監督の挑戦(前篇・後篇)」を書かせて頂いております。
普段私たちが実践している食への取組みをここで発信し、今後の高校スポーツ界の発展に貢献できたらと思います。

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武田高校は広島県東広島市の黒瀬町にある男女共学の私立学校です。
平日の練習時間は50分と日本一短い練習時間です。
文武両道を掲げ、少ない時間でも甲子園出場を目標に活動している創部9年目のチームです。
私自身は2014年コーチに就任、2015年部長、2015年新チーム(秋)から監督に就任しました。
まだ監督になって1年ですが、これまでの2年間の取組み、そしてこれからのビジョンを書こうと思います。
チームの夏大会の成績は1年目が1回戦、2年目が2回戦、3年目が3回戦と少しずつ結果もついてきていると感じます。
部員も1学年10人前後が2年目に26名3年目に30名と我々の取組みを理解して入部してくれるようになりました。


●2015年 春 
 【新入生への手紙】 

4月:広島県の高校野球は新入生の練習参加は3月25日以降と規定があるため、いくら入部希望していても練習参加することはできません。
そこで受験で合格が決まった生徒一人ひとり手紙を書くことにしました。
そこには、なぜ身体づくりを大切にするのか理由と根拠を書き、3年生までの身体づくりのビジョンを書きました。
早めに伝えることで時間のない我々にとってはスムーズに食事強化に移れるという発想からでした。
その結果、この学年の部員(現2年生)は今までの体重アップの伸び率とは比べ物にならないぐらい上昇しました。
頭ごなしに無理やり食べさせるのではなく、考え方や意図を明確に伝えたほうが結果は出ることをここで学びました。


5月:ゴールデンウィークの連戦により選手の体重は見るからに減り、プレーにおいても明らかにキレが落ちていると感じるようになりました。比例するように、おにぎりの量も徐々に減っていきました。ここで今までなら激を飛ばし、選手を鼓舞してきたのですが、あえてその方法を取らないで伝える方法はないかと考えました。数値で彼らに認識させるために、身長、体脂肪、を測り直し、体重に関しては今までの体重の推移をグラフで可視化しプリントアウトしてグランドの至る所に掲示していきました。監督は何も言わないがプリントがいろんなところに貼ってあるのを見て部員は何か気づいてくれるだろうと考えました。そこで監督の意図が気づけた部員がおそらく夏の大会のメンバーに入ってくるだろうと考えました。結果、自ら気づいた部員のおにぎりノートのコメント欄に変化が見られました。

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●2015年 夏 
 【夏対策とパワーナップ】
6月:この夏は"コンディショニングで勝つ"をテーマに掲げていたので、
本番1か月前から当日をイメージしてコンディショニング作りのミーティングを何回も入れていきました。
大会1週間前からは
「炭水化物を多く摂取する」
「ウォーターローディングの実施」
「アミノ酸ローディング実施」

の3つをテーマにし、
それに関する予備知識を毎日少しずつミーティングで確認していきました。

7月:この夏の大会は甲子園出場20回以上を誇る強豪校に接戦の末敗れました。
しかし最後までベストパフォーマンスを出し続けることができたと思います。
周囲の予想に反して、接戦だったのは明らかにコンディショニングによるものだと強く感じました。
それと同時に夏はコンディショニング次第で番狂わせが起こる。
上に行けばいくほどコンディショニングの差が出ると確信を持てた夏になりました。

8月:新チームから監督になったこともありチームのメニューを一から再考してみました。
そこで取り入れたのが夏休み期間の練習中でのパワーナップ(昼寝)です。
今までの身体づくりはカロリー摂取ばかりに考えが集中していました。
栄養と休養は同じぐらい大事なのに、休養の部分は部員に任せきりだったことに気づきました。
夏休みはどの高校も新チームを軌道に乗せるため必死に炎天下で練習しているはずです。
おそらくチーム平均2キロは減少するだろうと予想し、我々は逆にチーム平均2キロ増やすことができれば、
その差4キロで秋季大会を望めるのではないかと考えました。
結果、パワーナップ効果で夏にも関わらず、チーム平均2キロ増やすことに成功しました。
しかし、この時点ではまだ何もかも取り組みが浅く、知識も浅かったように思います。

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●2015年 秋 
【おにぎり制度をやめる】

9月:新チームになり1か月が過ぎたころ、
食事担当の部員から「おにぎり制度を廃止して欲しい」と申し出がありました。
担当者によると、おにぎりより炊き立てのご飯の方がたくさん食べることができるし、自分で考えてアレンジできると言う事でした。
制度を廃止することで食べなくなる部員がいるのではないかと思いましたが、
ここは部員の意見を信じてしばらく静観してみようと考えました。
今考えればこの決断は大成功でした。
おにぎり制度を実施していた時より、明らかに自主的に食べるようになりました。
食事強化と言ってこちらから押し付ける状況になっていたのではないかと深く反省しました。
大事なのは目的があるから食事をとることで、制度にこだわる必要はないのだと気づくことができました。

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10月:おにぎり制度を辞めて、ごはん制度になってから心がけたことがあります。
チーム内に一切の食べることに関してのノルマを廃止して、その代りなぜ食べるのかを再度ミーティングし、食べたくなるような仕掛けをできるだけこちらがたくさん用意して、いつでも食べたいときに食べることができる環境を用意しました。
体重測定はしますが、それに対して口うるさく言う事はなくなりました。

11月:我が校では11月から更に活動時間が短くなり、放課後の活動時間は45分になります。
そのタイミングで、以前から導入したかったウエイトトレーニングを本格的に導入しました。
ただやみくもに時間の限りウエイトをやるだけでは、効果は薄いと感じていました。
そこで取り入れたのが"短時間高強度"のタバタ式ウエイトトレーニングです。20秒動いて10秒レストの30秒を1セットにし、そこに様々なメニューを組んでいきました。
このやり方は、36分間でみっちり追い込めるので、残り時間を補足トレーニングに充てて、45分の練習でも3時間ぐらいの練習強度があるようにメニューを組みました。
強度が高いトレーニングをすることで、栄養の面に必ず意識が行くというこちらの狙いは、ばっちりハマりました。
高強度なトレーニングを折角したのだから、これを身体づくりにつなげたいと部員は思った様で、以前より更に興味を持つようになりました。


●2015年 冬 
【運動数値からの栄養摂取】

12月:高強度な練習を行うモチベーションを保つために、運動数値の測定を月1回行いました。
また、そのデータを他校と比較できるように、以前からつながりのあるチームの指導者の方とSNSでシェアをする仕組みをトレーナーと相談して構築することができました。
オフシーズンに他校と競う事で、モチベーションを維持できるし、トレーニングの成果を振り返ることができます。
この12月からのトレーニングをきっかけに武田高校の食への取組みが少しずつ変わってきました。


1月:運動数値を振り返りながら、伸び悩みや、弱点が見えてくるようになりました。
そこでチームに"力とパワーの違い"を再度ミーティングしました。
パワーを生み出すベースとして「力」が必要になってくることを再確認させました。
ベースとなる力をつけるには身体の重量が関係してくることを理論立てて説明しました。
なぜ体重を増やすか意味も分からずただご飯を食べている。
そんな考えに陥らない様に、目的から逆算する考え方を教えると、
自然と食の大事さに気づいてくれるのではないかと考えました。


2月:ウエイトトレーニングをしながらバルクアップと運動数値を向上させようと思ったら、
今より筋量が必要だということになりました。
お米ばかり食べて体重を増加しても、体脂肪が上がり動けなくなります。
そこで、怪我防止・疲労回復も含めてたんぱく質にこだわって食事強化を進めて行くことにしました。
たんぱく質は一日の目標摂取量を目標体重×2-3gと設定しました。
しかし、なかなか高校生に一度にたんぱく質の重要性を伝えるのは難しく、この冬はそこまで考えがチーム内に浸透できませんでした。


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●2016年 春
 【成長】

3月: 冬の成果としてチーム平均体重が2キロアップし、体脂肪率もチーム平均1.5%ダウンしました。
チーム平均を上げるのはとても難しいことですが、全員で取り組んだ成果がこの2キロアップだったと思います。
そして見た目にも昨年のオフシーズンと明らかな違いがありました。
筋肉量で体重を増やすことができ、フィジカル面も同時に強化できた充実したオフシーズンになりました。
それと同時にこの月から食事強化を更に進化させる為に準備をスタートさせました。


4月:練習試合が解禁になりインシーズンになりました。
明らかに身体つきが変わった成果はバッティングにも現れ始めました。
昨年度21本だったホームランが、今年は4月から11月の期間で119本まで飛躍的に伸びました。
部員も食事強化での変化にようやく気付いてくれたようで、以前より更に意欲的に食事に取り組むようになりました。


5月:もっと計算して身体を作る方法はないかと考えるようになりました。
そこで再度注目したのがたんぱく質です。
たんぱく質をもっと補食で取れないかと研究をする中で、ブロッコリースプラウトを栽培してみる事にしました。
種を買って野球部で栽培すると、たった5日で収穫できる事がわかりました。
摘み取ったブロッコリースプラウトを補食で食べるようになりました。


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●2016年 夏 
【コンディショニングで夏を戦う】

6月:新入部員が入って急に人数が増えてしまい、部員の体重管理が難しくなって来ました。
そこで全員の体重が一目でわかるように、体重を一か所に記入できるホワイトボードを新たに作成し直しました。
学年ごとに分けて記入する欄と全部員の体重ランキングの欄を設けました。
最近の子は自分ができないことはさほど気になりませんが、自分が最下位であることを凄く嫌う習性があるなと思いました。
そこを上手く刺激できるホワイトボードが完成しました。
1週間に一度、全部員の体重のランクがボードに張り出され自分がチーム内のどの位置にいるか分かるようにすることでボトムをアップすることを狙いとしました。

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7月:今大会は試合の当日のサプリメントや飲料にも事前に予備知識をミーティングで確認しあいながら開幕を迎えました。
当日のスケジュールも事前に確認して望みました。
チームとしては昨年を上回る3回戦まで進出しました。
これもコンディショニングで勝ち上がったと言える内容でした。
ここ3年間夏の大会中に足をつった部員は一人もいません。
ある一定の効果は出せましたが、今考えるとこのスケジュールもまだまだ改善点がたくさんあります。
次の夏までに再度コンディショニングを見直し臨みたいと思います。

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8月:監督2回目の夏は"リカバリー"を重点テーマとして過ごしました。
昨年度から行っているパワーナップ(昼寝)前にアイスバスに入って体温を下げてからパワーナップさせました。
すると目覚めも良いし過剰な水分摂取でお腹が一杯になることがなくなったので、パワーナップ後の補食も食べることができる様になりました。
昨年とは違う形でチーム平均を上げることに成功しました。

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●2016年 秋 
【栄養の自己管理】

9月:チーム内に少しずつ意識の差が出てきて体重の差が開いてきました。
そろそろ体重が多い子はプロテインの種類を変える必要があると考えました。
体重がある部員には炭水化物が少なく、たんぱく質が多いプロテインに。
体重がまだ必要な部員にはたんぱく質とプラスして炭水化物が多いプロテインを摂取させました。
もちろんビタミンも含んだプロテインを選択しています。
最近の安いプロテインにはたんぱく質しか入っていないプロテインもあることを知ることができました。
夏前に作った体重ボードでそのプロテインの種類分けを行いました。
体重上位ボードに行けばプロテインの種類が変わる仕組みも同時に作りました。


10月:本校は4月の入学生からi-padを1人1台持っています。
そこで「アスリートストーリーズ」というアプリを使って、睡眠時間と体重を毎日アプリで管理する取組みを始めました。
最近の子はアプリ内の方がコミュニケーションを取りやすい子もいるみたいで、積極的に自分のコンディショニングを投稿するようになりました。
私は野球ノートの感覚でこの投稿に毎日「いいね」を押し、気になる部員にはコメントを打っています。

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11月:たんぱく質の摂取を再度見つめ直す事にしました。
たんぱく質は1日の目標摂取量を目標体重×2-3gと設定しました。
1日に取った、たんぱく質の量をアスリートストーリーズにも記入し投稿するようにしました。
しかし、三食だけで十分な摂取は難しく、やはり補食が必要だと言うことに部員は気づくようになりました。
また、補食の種類も考えないと1日の目標摂取量には届かない事も理解してくれました。
そこで魚肉ソーセージを大量に買ってきて安く部員に手に入る仕組みを作りました。
魚肉ソーセージは1本約6.2gたんぱく質を含むので相当なコストパフォーマンスです。
1日のたんぱく質の量を計算して投稿しないといけないので、部員は食品によって何グラムのたんぱく質が入っているのかを調べる様になりました。商品に記載されている栄養表示を見るようになってきました。

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●2016年 冬 
【進化・次のステージへ】

12月:トレーニング時のカーボドリンクとして、特に身体が細い子に対してマルトデキストリンやCCDの摂取を考える様になりました。
CCDをチームで購入して全員に飲ませるには資金的に継続が難しいので、マルトデキストリンをカーボドリンクとしてプロテインと割る事を考えました。
ウエイトトレーニング中に炭水化物を摂取することで筋肉の分解を抑えて効率よく筋肥大を狙いたいと考えました。
身体はグリコーゲンを燃料として優先的に利用します。
我が部のトレーニングは短時間高強度を意識しているので、運動中にグリコーゲンを適正レベルに保つようにマルトデキストリンを利用するとパフォーマンスに有益効果があるだけでなく、その後の疲労回復も速まり、翌日も高強度なトレーニングがまた可能になります。
マルトデキストリンはでんぷんなのでコストの面も安心です。


1月(現在):2年目の冬のオフシーズン真っただ中の今は、オメガ3脂肪酸に注目しています。
サプリメントを買えたら一番良いのですが、高校野球なのでコスト、安全、継続をクリアできる条件を今探しているところです。

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この様に我々の取組みはまだ始まって3年ですが、いろいろなチャレンジをしてきました。
練習時間が短い事は逆にチャンスだと思い、他校が目を向けてない「食事」をどれだけ考え、武器にしていくか。
まだまだ日本はトレーニングに関して遅れているし、高校野球の現場はいまだに決められたノルマのお米をはきそうになりながら食べているのが現状です。
短い時間で"食事で勝つ"ことができれば、それが日本のアマチュアスポーツに貢献できると思っています。
まだまだ我が部の取組みはレベルが低いですが、今後も研究とチャレンジ、何事もトライ&エラーの精神で頑張って行こうと思います。

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武田高校の3年間の取組をご紹介頂きました。
食事内容、管理方法、モチベーション管理など精力的に色々な事を試されています。
同じように野球に取り組む選手のサポートしている方や、
違うスポーツの方も参考になる取り組みも多いのではないでしょうか?

印象的なのは、選手や部員の方が自ら意識を持って、監督と相談しながら改善して取り組んでいる姿勢です。
前編・後編と合わせて、部員の方々の食に対する意識変化を感じます。
何を何の為に食べるのかという意識があるとないとでは取り組み方の質が変わる事を
変化を通して部員が学んでるのではないでしょうか。

それを岡嵜様が部員と一緒に一生懸命取り組んでいらっしゃると感じました。
試行錯誤も続きますが、是非甲子園めざして引き続き頑張って頂きたいです!


(まとめ アスリートフードマイスター 事務局佐藤)


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