「バナナが大事!」byアスリートフードマイスター 公式ブログ

2016年12月15日

現役 高校野球部監督の挑戦(前篇)『導入と変化』

アスリートフードマイスター3級の岡嵜雄介です。
今回から2回にわたり「現役 高校野球部監督の挑戦(前篇・後篇)」を書かせて頂くことになりました。
普段私たちが実践している食への取組みをここで発信し、今後の高校スポーツ界の発展に貢献できたらと思います。

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武田高校は広島県東広島市の黒瀬町にある男女共学の私立学校です。
平日の練習時間は50分と日本一短い練習時間です。
文武両道を掲げ、少ない時間でも甲子園出場を目標に活動している創部9年目のチームです。
私自身は2014年コーチに就任、2015年部長、2015年新チーム(秋)から監督に就任しました。
まだ監督になって1年ですが、これまでの2年間の取組み、そしてこれからのビジョンを書こうと思います。
チームの夏大会の成績は1年目が1回戦、2年目が2回戦、3年目が3回戦と少しずつ結果もついてきていると感じます。
部員も1学年10人前後が2年目に26名3年目に30名と我々の取組みを理解して入部してくれるようになりました。


●2014年 春 
【食事強化スタート】

2014年4月:武田高校に赴任(コーチ)してまず感じたのが圧倒的な部員の線の細さでした。
県内を見ても明らかに平均を大きく下回る身体つきに驚きと焦りを感じました。
そこでまずおにぎりをマネージャーに握ってもらうことからスタートしました。
最初は、とにかく量をやみくもに食べるだけで、握った数でその日食べる量が決まると言うものでした。
すると問題がおきます。食べる量に個人差ができ、全くチームの取組みとしては機能しなくなりました。

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5月:食べる量に個人差ができ、おにぎりを残してしまう日が多くなりました。
寮の冷凍庫がおにぎりでいっぱいになる事も増えてきました。
そこで「おにぎり自己申告制」を導入しました。
「おにぎりノート」を作り、朝の自分の体調を考慮し
自分で食べられる個数を記入する仕組みを取り入れました。
また、おにぎりの大きさをコンビニのおにぎりと同じサイズに統一することで、
握る側のマネージャーも計算してお米を炊くようになりました。
このころから毎週月曜日を「リカバリーの日」と題して、
練習中に卵かけご飯を食べる取組みを始めました。
卵は学校の近くの養鶏場に協力していただき、新鮮な卵を届けて頂けるようになりました。
しかしまだこの時は、取組みの初期段階。様々な点でレベルが低かったように思います。


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●2014年 夏 
【夏対策・補食の研究】

6月:梅雨と気温上昇に伴い、卵かけご飯を一時中断することにしました。
この時期は一気に気温も上がり発汗量も増えるため体重が減る時期です。
そこでプロテインの摂取を積極的に行うことにしました。
コストの面も考え、プロテインときな粉を2:2の割合で割って摂取していきました。
スーパーなどで売っているきな粉は粒が荒く分離するので飲めないことが分かりました。
そこで京都のきな粉屋から特別に取り寄せて割ることにしました。
 
7月:後半に新チームがスタートして、意識アップのために健康体力研究所の
スタッフの方に栄養講習を開いて頂きました。
保護者の方も出席していただいて、この夏の食意識を考え直すきっかけを作りました。
私以外の方が栄養について話をすることで、逆に部員にはスムーズに知識が入っているように感じました。
やはり専門的な方に定期的にお話をして頂く重要性をすごく感じました。
この辺にアスリートフードマイスターのニーズがあるように感じます。
また夏休みの間は毎日体重測定を行い部員が見える位置にボードを置き、記入させていきました。
前日より体重が減っていたら赤字で書くことでその日の食事に意識を持たせました。
また、練習の休憩中や水分補給時に飴をなめさせる取組みも行いました。
カロリーとしては数十カロリーですが、食への意識を持続するには良かったと思います。

8月:寮の食事を業者に診断して頂き、栄養チェックシートを出して貰いました。
足りない栄養素を数値化していただき、普段のマネージャーが作る補食で補う取組みを行いました。
そうめんを導入するなどをマネージャーが進んで取組むことで、
選手だけでなくマネージャーも部員としての意識が高まりました。

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●2014年 秋 新おにぎりノート登場!平均体重体重5KUP!

9月:夏休みで食事への興味が湧いたマネージャーを他のチームへ派遣し、食事現場の見学を行いました。
中学のクラブチームなどは、お母様方が昼食を作るチームがあります。
その現場を見せて頂くことによって手際やバリエーションの多さを学ぶことが出来ました。

10月:気温も徐々に下がってきて、一時中断していた卵かけごはんを再開させました。
この卵かけご飯再開を楽しみにしていた選手も多く、少しずつではありますが、
食への意識向上が見られるようになりました。

11月:おにぎりノートも改良されて、おにぎりの個数とその日の体重を記入できる様になりました。
ノートを活用できる様になり、一言コメントの欄に書く選手の言葉もより具体性を持ったものが多くなってきました。
ここまでで4月からのチーム平均体重が+5キロアップしました。

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●2014年 冬 METsの導入

12月:オフシーズンに突入したことで、ここまでの食事強化を見直すことにしました。
見直すきっかけは他チームなど野球界全体を見ると、活動時間が短い本校も他の強豪校と
同じような食事強化の取り組みをしていることに気づいたことからでした。
野球の戦術面でも同様ですが、50分しかないチームが3ー4時間ぐらい練習できるチームと同じ方法では
結果は必ず時間がある方が有利です。他校がやっていない独自のアプローチが必要だと感じました。
そこでもう一度はじめから食事を強化する目的と目標を再考しました。

1月:これまでの『ただたくさん食べる』から『考えて食べる』に変換点になったのはこの月からでした。
ここで導入したのが『METs』でした。
METsとはMetabolic equivalentsの略称で、摂取カロリーでなく、消費カロリー値の事です。
METs tableという指標を基準に1日の消費カロリーを計算させていきました。
計算することで摂取カロリーを考えるようになってきました。
本校は寮生の部員が多いので寮で出されるメニュー表にカロリーが書いてあることを知り、
部員も意欲的に計算していました。

エネルギー消費量=1.05×METs×時間×体重

2月:METsを導入したことで、無理やりご飯を詰め込むという光景はなくなり、
全員がしっかり考えて食事をするようになりました。
おにぎりノートの内容もそれまでは仲間と個数を合わせていた部員が
自分のスケジュールで摂取する量を考えるようになりました。
その結果、冬は全員が体重を確実に増やすことに成功しました。


3月:オフシーズンが終わり、一気に運動量が上がったことで部員の体重管理は非常に難しくなってきました。
オフシーズンのようにスケジュールを固定できないことからMETsの運営が難しくなってきました。
それは高校野球の指導経験が薄い自分の弱点が顕著に出た結果でした。
経験不足からくる準備不足を痛感しました。
高校野球のスケジュール、学校のスケジュールを把握して先回りしながら
マネジメントすることが高校野球の現場では必要です。
強豪校と同じ条件でない分、より指導者の準備、勉強が必要だという事を痛感しました。
この結果が、翌年からの更なる食事強化の研究のきっかけになったと今では思います。

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我が校は時間的制約が日本一厳しいと思いますが、
食事強化の導入をきっかけにチームは劇的に変化していきました。
身体つきが変わるという変化もですが、一番に自分たちの環境でも勝てる、目指せるといった
心境の変化が非常に大きかった1年でした。
それまで、できない理由を考えていた子供たちが、できる理由を探すように少しずつ変化してきました
これこそが一番の"変化"となりました。

しかし、それだけではすぐには結果が出ないし、次々と問題が起こるのが高校野球です。
ここから更に本校の食事強化は大きく変わっていきます。

 次回は最終回"成長と進化"について書かせて頂きたいと思います。 つづく・・・

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